「フィット」発売1年、快適さが際立つ通信簿 コンパクトカーらしい実用性を追求したホンダ

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松本は、欧州視察で路上駐車することが一般的な市街地での様子を見て、とくにパリでは前後のバンパーを互いにぶつけるようにして路上駐車するのが日常的であることも理解し、リアゲートではなく後席からもいろいろな大きさの荷物の出し入れができるように工夫したのだ。実際にこれが欧州でほかに例のないフィットの魅力として高い評価を得たという。また荷室についても、燃料タンクを車体中央へ配置することで、荷室の床を低くでき、背の高い荷物を載せやすくもなる。

実用性や機能性だけでなく、全体的には簡素な外観ながら、グリルレス風の顔つきに大きなヘッドライトを配置したことで目立つ表情は、ほかのどのコンパクトカーとも違う存在感を生み出している。外観の造形の評価会では、役員からヘッドライトが大きすぎるのではないかとの意見もあったようだが、これを押し通したことによってフィットというクルマの顔が特徴づけられ、3代目では別の表情となったが、新型で再びヘッドライトがフィットらしさを蘇らせるようになった。フィットという価値の継承と、新たな機能の進化が、見た目にも新型への期待を呼び覚ましたのである。

初代を思わせるヘッドライトが採用された現行モデルにあたる4代目フィット(写真:ホンダ)

前方視界の改善し、安全性を高めた新型フィット

新型フィットの革新は、多岐にわたる。第一は、前方視界の画期的改善だ。1990年代以降、ドイツを発信源とした衝突安全性能の向上が世界的にも求められ、事故の大半を占める前面衝突性能を高めることが進められた。その結果、車体前部で衝撃を吸収するとともに、客室は堅牢な作りとして乗員を守るため、フロントの窓ガラスを支えるピラー(支柱)を太くしなければならなくなった。その結果、前方視界が悪化したのである。

交通安全は、どれが先ということではないかもしれないが、そもそも視界が悪く見通せなければ、見落としがあったり、気づきが遅れたりして、事故に至る可能性が高まる。ところが、衝突後の安全性能を優先して高める流れとなり、前方視界の悪化が進んだのである。各自動車メーカーは、フロントピラー断面を工夫したり、湾曲させたりして改善に臨んだが、それでもなお今日でさえ前方視界の確保は不十分だ。

フィットのサイドビュー(写真:ホンダ)
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