福岡と長崎の間で存在感、佐賀県ご当地鉄道事情 お隣の県に翻弄されつつ効率よく広がる鉄道網

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しかし、である。実際に佐賀県の鉄道の旅をしてみると、そんなイメージは案外に正しくないことがわかってくる。何しろ佐賀県は、九州一の160万都市・福岡市とかなり近い。そんなわけで、まずは福岡から佐賀を目指して、佐賀の鉄道を旅してみようと思う。

福岡から佐賀に鉄道で入る手段は2つある。まずは王道の長崎本線である。長崎本線は鳥栖―長崎間を結ぶ九州の大動脈の1つで、特急「かもめ」が走っている。鳥栖は佐賀県の東の端っこ、つまりは佐賀の玄関口にあたるような駅だ。となると、そもそも鹿児島本線が鳥栖駅前後の区間で佐賀県内をかすめているということになる。(ちなみに、鹿児島本線と並行している西鉄天神大牟田線は佐賀県内は経由しない)。

ただ、本格的に佐賀県に入ることを考えればまだまだ鳥栖は序の口の序の口。なので、そこから先の佐賀県内に分け入ってゆく長崎本線に乗ってこそ、ということになろう。そして、長崎本線の特急かもめは鹿児島本線から長崎本線に直通しているので、かもめこそが佐賀県を訪れるための黄金ルートと言っていい。

“佐賀本線”でない悲しさ

長崎本線はそのまま佐賀平野のど真ん中をズバッと横断し、杵島丘陵にぶつかるあたりで南に進路を変えて有明海沿いをゆく。長崎県に入るのは肥前大浦―小長井間。長崎本線と名乗りながらも長崎県内よりも佐賀県内を走る距離のほうが長い。

長崎本線の特急「かもめ」。博多と長崎を結ぶだけでなく、佐賀へのアクセスを担う(筆者撮影)

だから佐賀本線と名乗ってもいいのではないかとも思うが、このあたりに長崎と佐賀の知名度の差が響いているような気がして少し悲しさを覚えてしまう。

ともあれ、長崎本線は佐賀平野、つまりは佐賀の中心といえる一帯を貫くので、九州の大動脈であると同時に佐賀県内でいちばんの大動脈である。佐賀=田舎のイメージを抱えて博多駅から「かもめ」に乗るとたいてい驚く。

コロナ前、という注釈付きではあるけれど、自由席はだいたい満員で通勤時間帯になると立っている人もちらほらいるほどだ。「長崎に行く人が多いのかな、それとも福岡県内でも通勤ライナーのように乗る人がいるのかな」などと思っていると、そのお客たちの多くが佐賀駅でずらずらと降りてゆく。佐賀は福岡への通勤圏内でもある、というわけだ。

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