さらに鳥栖駅から「かもめ」ではなくて普通列車に乗ってみるのもいいだろう。平日の真っ昼間の車内はガラガラだが、夕方になって通学時間帯になると上りも下りも学生だらけ。そこに通勤のお客も合わさって、意外に混雑している。広々とした佐賀平野、米どころであると同時に、長崎本線は住宅地の中を走る路線であるといっていいのである。
このあたりで、もう1つの福岡→佐賀ルートをたどってみよう。それは、福岡空港からも乗り換えなしで行くことのできるJR筑肥線。九州のJR線では珍しい直流電化、福岡市営地下鉄とも直通しているこの路線は玄界灘に沿って一路西へ、鹿家(しかか)―浜崎間で県境をまたいで佐賀県に入ると佐賀県北部の中心都市・唐津市へ。長崎本線以上に圧倒的な通勤通学路線である。唐津を中心とする佐賀県北部は、県都・佐賀市よりも福岡市との関係性が深いということなのだろう。
県の南北を結ぶ唐津線
長崎本線と筑肥線、この2路線を旅してしまえば、佐賀県の鉄道の大部分は片付いたといっていい。強いて言うなら、古くは炭鉱路線として出発した笹原峠越えのローカル線・唐津線。こちらは佐賀県の南北を直接結ぶ唯一ともいえる路線であって、運転本数の少ない非電化ローカル線とはいえその役割はいまだに大きい。
もしこの路線がなければ、同じ佐賀県であっても南部と北部はまるで別の県のようにバラバラになってしまう(江戸時代までは佐賀藩と唐津藩でまったく二分されていた)。鉄道路線の役割や価値は単にお客の多寡だけで決まるのではなく、どのような地域を結んでいるかという点でも決まってくるのである。
さて、佐賀県の鉄道の旅はこれで終わり……としたいところだが、実際にはまだある。ここで改めて佐賀県内の路線図を見てみよう。1つ、東に鳥栖駅が鹿児島本線と分かれる要衝の地。そして長崎本線が西に延びて佐賀駅を経ると、肥前山口という駅がある。こちらは東の要衝・鳥栖に対して西の要衝としての立場を持っている。肥前山口駅から南に向かうのが長崎本線、そしてまっすぐ西に向かうのが佐世保線である。
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