「スタンド・バイ・ミー」は駄作扱いだった衝撃事実 「当たるはずがない」と多くの会社が配給拒否
しかし映画完成後も、同作は同じ苦難に悩まされる。今作を配給する予定だったエンバシーが買収されてしまったため、プロデューサーらは新しい配給会社を探す必要があったのだが、またもやどの会社からも「当たるはずがない」と断られてしまったのだ。
そこでプロデューサーたちが助けを求めた相手が、マイケル・オーヴィッツである。彼は世界最大のタレント代理業務事業会社であるクリエイティブ・アーティスト・エージェンシー(CAA)の創設者。ハリウッドに“エージェント時代”をもたらした彼は当時、最も勢いに乗っているパワフルな人物だった。
監督のライナーはCAAに所属しており、出資者のリアはオーヴィッツの友人。彼らの心配をしたオーヴィッツが助っ人役を買って出て、まだ配給を断られていないスタジオと配給会社のために試写会を組んでくれた。
ゴリ押しで掴んだ希望
だが、試写会の感想は散々だった。CAAの社員によると上映中、居眠りをする観客もいるなど、あいかわらず手応えはゼロ。それでも最終的には、製作段階でキャンセルしたコロンビア・ピクチャーズが拾ってくれることになったのである。
その経緯についてオーヴィッツは、元コロンビアのプレジデントで当時ユニバーサルの会長だったフランク・プライスに「人間関係が壊れるかもしれないというくらいの強いプレッシャーをかけ、彼の影響力を行使してもらったのだ」と回顧録で振り返っている。
一方、ライナーとエヴァンスはハリウッドの業界紙『Variety』に対し、オーヴィッツがコロンビアの制作トップに「君が今の仕事に就けたのは俺のおかげだろうが。映画を見てくれよ」とゴリ押しをしたのだと語っている。
そう言われて、フランク・プライスが自宅で試写を組んでもらったところ、一緒に観賞した2人の娘がすっかりフェニックスに惚れ込んだため、彼の心は動かされたそうだ。
さらに、コロンビアの別の上役にも自宅で映画を見てもらったところ、感動したうえ、「儲からなくてもいい。この映画がほしい」とまで言わしめたという。
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