ビッグサイエンスを変えた"蓮舫ショック" どのように予算措置を順位づけるか?

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しかし蓮舫議員の言葉は、単なる反発のみならず、数百億円規模の巨額な資金が集中して投下されるビッグサイエンスの推進者たちに、あらためて国税を使用した科学の重みを感じさせる言葉にもなりました。なぜ、この科学に、巨額な国費を投入しなければならないのか。多くの人がそう疑問に感じることは当然のことです。ビッグサイエンスにどこまで国費をかけていいのかという問いに対しては、経験的な目安はある一方、今も議論が続いています。

そしてこの「蓮舫ショック」から、日本のビッグサイエンスの流れが大きく変わったのです。

アメリカの失敗とロードマップ

日本の動きを見る前に、アメリカにおけるビッグサイエンス推進の転機を紹介します。当時の世界最大級のビッグサイエンスのプロジェクトを、予算の増加を理由に途中で中止にしたのです。それが1987年に承認され1991年から建設が始まっていたSSC実験と呼ばれる巨大施設でした。

SSCは周長が90kmにもなる巨大なトンネルを掘り、そこに加速器を設置して、宇宙の謎の解明につながる素粒子を研究するための実験施設でした。しかし当初の設計通りに動かすことが難しく、設計の修正および予算の修正をするうちに巨額予算になり、1993年、下院がついにノーと言いました。そして、途中まで工事が進んでいたこのプロジェクトは中止になったのです。

アメリカのみならず世界中から多くの物理学者が参加していた計画が中止になった影響は非常に大きなものでした。プロジェクトを失った多くの物理学者が、ジュネーブにある欧州原子核研究機構(CERN)の実験に参加を希望したと聞きます。また同時に、アカデミアの外にも出ていったといいます。当時、CERNに集った物理学者たちは、ライバルだったアメリカに集っていた物理学者たちが、頭を下げてCERNに来たことに複雑な思いを抱きながらも快く受け入れたそうです。

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