こうした中、代表的な研究者が集い議論する「日本学術会議」の中で、新しい活動が始まります。それが、通称「マスタープラン」の作成です。ビッグサイエンスにも、研究者自身がテーマを提案するボトムアップ型と、政府からトップダウンにミッションが与えられる計画があります。
日本学術会議では、主に研究者自身の発案によるボトムアップの計画について議論しました。そして2010年に日本として初めての科学者自身が考えるビッグサイエンスのリスト、「マスタープラン」(提言「学術の大型施設計画・大規模研究計画-企画・推進策の在り方とマスタープラン策定について-」)を発表したのです。ビッグサイエンスに慣れている物理や情報系のみならず、新たにビッグサイエンス2.0時代に台頭した生命医学系、そして人文系のビッグサイエンスも提案されています。
マスタープランは小改訂を2011年に行い、その後は3年ごとに見直すという方針のもと、2014年2月に「マスタープラン2014」を発表しています。将来の大きな夢を、研究者集団を挙げて議論するという試みは、研究者を大いに勇気づけ前向きな議論がされたと聞きます。一方で予算の枠は限られており、またプロジェクトとして成り立つか否かの成熟度にもばらつきがあります。改定ごとにより練られた計画になっていくことが期待されていますが、提案された207ものプロジェクトがどのように進展していくか注目が集まっています。
どうやって決める?次のビッグサイエンス
マスタープランに提案されたビッグサイエンスのうち、どれを優先的に進めるのか。それを決めるのは文部科学省です。文部科学省では審議会のメンバーがマスタープランに提示されたビッグサイエンスを元にヒアリングを行い、優先順位を決めます。そして作成されるのが「ロードマップ」と呼ばれています。
ロードマップはマスタープランの発表後にそれぞれ作成されます。マスタープランの207プロジェクトのうち、学術会議が優先順位が高いとした27計画について審査を行い、うち「新しいステージに向けた学術情報ネットワーク(SINET)」「ゲノム医療開発研究拠点の形成」などの10計画が新たにロードマップ案に掲載されました。評価項目は、学術的価値はもちろん、研究推進の体制や研究者の合意など7つに上ります。私もこのメンバーとして評価に参加していましたが、掲載されたプロジェクトはいずれも評価の高いプロジェクトでした。
このロードマップは必ずその順番に実行されるべきもの、というものではなく、いくつもの予算枠の中で参照していただきながら進むものと考えられています。ロードマップにより、ビッグサイエンスの推進が飛躍的に整備されました。しかしビッグサイエンスに巨額予算が必要であることは変わらず、ビッグサイエンスを進めるには何かしらの工夫が必要になります。その工夫についてはまた次回、ご紹介したいと思います。
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