堀江貴文さんが「糖尿病の最新治療薬」を飲む理由 行動変容のために「デジタル薬」も必要だ

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一度心臓病を起こしたことがある糖尿病患者さんにSGLT2阻害薬を投薬するだけで、死亡率が30%も減少したとの統計まである。ひとつの薬で、死亡率をそれほど減らすものはないらしい。伊藤教授は次のように言う。

「SGLT2阻害薬の開発者の1人が『この薬が糖尿病の薬とされることは不満だ。もっと作用が大きく、臓器を守る薬なのだ』と言っていますが、心不全に使えて腎臓が悪い人にも有効なのだから、それはある意味正しいと思います」。僕は、SGLT2阻害薬は画期的な発明だと思う。

「はたして糖尿病はどのような病気か。ここ10年、その本質が問い直されています」。伊藤教授によれば、糖尿病は21世紀に入ってから発見が相次ぎ、そのことで、糖尿病の正体がわかっていなかったことに気づかされたという。今、糖尿病の本質を突き止める研究が始まっているそうだ。 

「糖尿病の研究は、『食』という、生物の生存にとってもっとも基本的なことにかかわっています。それゆえ、われわれ人間の生物としての強靭さ、また寿命など生命の根幹に迫れる可能性があります」

へぇー、糖尿病ってそんなに奥が深いんだ。僕は、伊藤教授に人間の体の仕組みから説明してもらった。詳しくは本書に譲るが、糖尿病は――血糖値を下げるインスリンの分泌量が減る、あるいはインスリンの効きが悪くなることで、たくさんのインスリンを分泌する必要があるのに、それに見合うインスリンを分泌できないため、血糖値が上がって起こる。すなわち、膵臓の病気――が世間の常識だった。ところが、糖尿病発症の源流は腸の炎症にあり、さらに腎臓もからんでいるという伊藤教授の話はまったく想定外で、実に刺激的だった。

「デジタル薬」とは?

続いて、「デジタル薬」について取材してみた。デジタル薬とは、デジタル機器で患者さんの意識や生活習慣を変え、病気の治療をしていくものだ。医薬品と比べて開発費が安く、副作用のリスクが低いことから、現在、新たな治療ツールとして脚光を浴びている。

2020年8月、日本のスタートアップ企業Save Medicalは、大日本住友製薬と糖尿病管理指導用アプリの共同開発契約を結び、2022年度中のPMDA(医薬品医療機器総合機構)の承認取得を目指すことを発表した。具体的にどのようなものか、同社の淺野正太郎代表取締役社長に話をうかがった。

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