「甲子園での肩の酷使」は禁止しよう キュラソー式野球は、「楽しんで上達する」

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種子島ほどの国土面積に人口15万人しか住んでいないキュラソー島は、国力が低い。その中で優秀な野球選手を数多く輩出している理由は、「数少ない子どもたちの可能性を、どうすれば伸ばしてあげられるか」と考えていることにある。

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弟のアントニオ・シモンが監督、兄のスタンリー・シモンがコーチとしてトライセロのシニアチームを指導

2月末、キュラソーの首都ウィレムスタットから車で20分ほど走り、ボナンという町に到着した。

地元リーグ「リガ・パリバ」の強豪トライセロのシニアチーム(15、16歳)が平日の夕刻、練習に励んでいる。キャッチボール、守備練習が終わると、全員がマウンドに集まり始めた。各々が数球ずつ、キャッチャーにボールを投げ込んでいく。

「振りかぶったときにためを作ってから、投げるんだ」。63歳のコーチ、スタンリー・シモンがワインドアップの状態で少年を静止させ、パワーをため込む方法を教えている。「あいつはピッチャーを始めたばかりだから、メカニック(フォームにおける一連の動き)ができていない。でもそれを覚えていけば、いいピッチャーになれると思う」。

シモンによると、パンチョのニックネームで呼ばれるこの少年、ドルファー・ロドリゲスは投手を始めて1年に満たない。捕手と一塁を守るパンチョはこの年代でキュラソー代表に選ばれるほどの強打者だが、なぜ、わざわざ投手の練習を始めさせたのか。そうたずねると、シモンはイタズラな笑みを浮かべた。

「だって、1度やってみないと、誰がいいピッチャーになれるかわからないだろ? それくらいの話だよ」(笑)。

すべてのチームに人数制限

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素振りでフォームを確認する選手

キュラソーでは少年年代のすべてのチームに12〜15人と人数制限が設けられ、全員が複数の守備位置に就く。リガ・パリバの会長デニス・ダンブルックによると、「可能性を広げるためだ」。子どもはスペシャリストとして育てるのではなく、ジェネラリストとして育成したほうが、チャンスをモノにする可能性が高まると考えられている。

キュラソーを訪れて驚かされたのが、優れた育成システムだ。ダンブルックの言葉を借りると、当地の野球は「エレベーターゲーム」と表現される。少年リーグは「プリ・インファンティル(7〜9歳)」「マイナー(9、10歳)」「リトル(11、12歳)」「ジュニア(13、14歳)」「シニア(15、16歳)「ジュベニル(16〜18歳)」と6つの年代に分かれ、年齢を経るごとに同じチームで自動昇格していくのが一般的だ。

優秀な少年は、上の年代の練習に参加することもある。共通の指導方針で7歳から18歳まで育てられ、短期の視点で見ないから勝利至上主義に走ることはない。

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