量子コンピューターを知る人が圧倒的に利する訳 膨大な計算処理だけでなく「私とは何か」も解明?

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ところが、量子デジタルコンピュータで、ショアの整数の因数分解のアルゴリズムを使えば、1万桁の整数の因数分解も数時間で計算可能と想定されています。

ですから、先ほど紹介した公開鍵暗号方式は、もし量子デジタルコンピュータが実現すると数時間で突破されることになり、その安全性が保てない事態に直面することになります。

とは言ってみたものの、もし量子デジタルコンピュータが実現したとしても、心配は要りません。

量子デジタルコンピュータを実現する技術は、公開鍵暗号方式を打開する一方で、量子暗号方式というものも実現する技術となるからです。

要するに、鍵を突破する技術の向上以上に、鍵の技術も向上するはずだから心配はいらない、というわけです。

さて、こうした技術の基礎理論として、「量子もつれ=量子エンタングルメント」という量子状態についても紹介したいところですが、その典型として「Bell状態」や「GHZ状態」を解説するためには、まずケットベクトルのテンソル積というのも紹介して……と、本筋ではない説明が雪だるま方式で増えていってしまうため、ここでは控えさせていただきたいと思います。

興味を持たれた方は、上坂吉則著『量子コンピュータの基礎数理』(コロナ社)など、詳しい説明がされている書籍にぜひ挑戦してみてください。

挑戦といっても、0と1 と虚数単位iの3つのうち、2つの掛け算を、ある順序にしたがって行なうだけですので、数学だと思わず、単なる記号操作だと思えば、理系科目が不慣れだった方もついていける内容です。

結果として、これからの社会に大きな影響をもたらすと目される量子コンピュータの凄まじさを理解できるのですから、視野を広げるべく、挑戦されることをお勧めします。

「私とは何か?」の解明

もう1つ、大きな期待が寄せられているのは、「自己意識」の解明です。量子力学の解明と量子コンピュータによって「私とは何か?」が解けるかもしれない、とされているのです。

まず、私たちが普段感じている「意識」について考えてみましょう。

「私」というものは大きく2つのモノ、「私の体」と「私の心」が合わさって出来たものです。ここではひとまず、「私の体」のほうだけ注意を向けてみましょう。

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