量子コンピューターを知る人が圧倒的に利する訳 膨大な計算処理だけでなく「私とは何か」も解明?

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慶應義塾大学大学院(SDM 研究科)の前野隆司教授が提唱する、「受動意識仮説」という説があります。

受動意識仮説とは、一言でいうと、私たち人間1人ひとりが、「私が」というふうに主語で表す意識主体たる「私」は、私たちが通常そう感じているような「能動的な主体」ではなく、「受動的な何か」でしかないのではないか、という仮説です。

「私(=「私の心」)」は、私の「司令塔」ではなく、私(=「私の体」+「私の心」)で起こっていることの単なる「観測者」ではないかというのです。

私が先ほど、「私」がやっていることなのか、それとも、ただ単に「観測している」だけなのか、という問いかけをしたのは、このような仮説によるものでした。

「ちょっと待ってくれよ。そういう事々は、百歩譲って、受動意識仮説の通りとしよう。しかし、もっと能動的なこと、たとえば、指を動かすといったことは、俺の中にいる『私』が、やっていることとしか思えんぞ!」

という声が聞こえてきそうですね。ところが、実は、それがそうではないのだという実験結果があるのです。

カリフォルニア大学サンフランシスコ校のリベット教授が行なった実験で、1983 年の論文で発表されたものです。実験の詳細は、例によってググっていただくとして、結果だけ申し上げます。

「0.2秒の差」が意味すること

脳の中で「指を動かせ」という信号が、指の筋肉に向けて発せられた時刻と、心の中で「指を動かそうと思った」時刻を比べたら、脳の中で「指を動かせ」信号が発せられた時刻のほうが、0.2 秒、早かったのです。

つまり、脳の中で「指を動かせ」信号が発せられたわずかな後に、心の中で「指を動かそうと思った」というわけです。 言い換えると、残念なことに(でもないか)、「俺の中にいる『私』が、能動的に指を動かそう」と思ったのではなく、脳の中で「指を動かせ」信号が指の筋肉に向けて発せられたのを観測して、慌てて(0.2 秒も遅れているから、そうでもないか)「俺の中にいる『私』が、能動的に指を動かそうと思ったんだ」という理屈になるわけです。

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