課題の1つが「規制速度」である。法定速度を上限に、道路構造や交通量などを加味して設けられるのが規制速度だが、日本国内におけるその値は実際の道路環境にそぐわない、もしくは低すぎると評されることが多い。
しかしながら、根底には安全性を最重要視した設計思想があるとの理解も進み、不便だなと感じながらも従っているドライバーが大半だと思う。
一方、「実勢速度」という言葉がある。状況に応じた“交通の流れ”のことだ。警察庁交通局には、規制速度の決定に対する基本的な考え方があり、そこでは実勢速度にも触れられている。
「日本では、ほぼすべての道路が居住行動圏内にあり、実勢速度を規制速度にする(=規制速度を高めて流れに合わせる)と交通事故が増加する恐れがある。よって実勢速度である『85パーセンタイル速度(=ある地点を走行する車両速度の85%にあたる速度)』に、交通事故抑制の観点を考慮した全国一律の規制速度の基準となる速度、いわゆる『基準速度』を導入する」(発表資料より。 カッコ内は筆者補足)というものだ。
わかりやすく1つの例で考えてみる。85パーセンタイル速度が70.4km/hの中央分離帯のある4車線以上で交通量が少ない国道では、基準速度の上限値である60km/hに策定する。これが第1段階。
“規制速度”という考え方
次に第2段階として、この基準速度を決めた道路の安全性や道路構造、沿道の状況、交通特性を加味(警察庁では「補正」と呼称)して、“規制速度”を決定する。
よって基準速度が同じ60km/hの道路でも、交通特性から考えて規制速度が50km/hに下げられることもあれば60km/hのままの場合もある。
つまり、各道路の状況をあらゆる角度から考え、さらに実勢速度も加味しながら規制速度は決められているのだ。一見するとややこしいが、どこもかしこも速度を出すと危ないからといって乱暴に低い規制速度にしているわけではない。
このようにドライバーとして“低いな”と感じる規制速度は、可能な限り実際の道路環境(例えば、夜間に事故が発生しやすいなど)に即して決定されている現実がある。
その点、今回の試乗コースとなった首都高速道路の都心環状線の場合は、設計年次が古いことや、設計当時の用地買収問題との関連で曲率のきついカーブが多いことから、規制速度が低く抑えられた特別な事情がある。
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