櫻田:突き詰めると、人間の本能に反することをやったら長く続かないと思っているのです。私が入社した頃は「お国のため」という発想が日本人にありました。それが戦後どん底からすごい勢いで上がってきた、いわゆる強い精神構造をもたらしたのは間違いないですけれどもね。
もう1つ、よく疑問に思っていたのは、男女においても、大学までは自分よりも成績がよかったりした女性が、会社に入ったらどうしてサポート役の業務が多いのかということもおかしいなと思いました。
小室:それ、おいくつくらいのころの話ですか。そんなフラットな感覚を入社当時からお持ちだったんですね。
櫻田:フラットとかではなくて、私の場合、結婚する相手が会社ではサポート役なんだけど家に帰ったら立場が逆転していたから……。
小室:あれ(笑)、そうなんですね。でも大半の経営者や管理職においては「やっぱり男性ばっかりで長時間労働をして、均一な組織を作って、それで大成功したじゃないか、この国は」という成功体験が非常に強いですよね。そんななか、さらに櫻田さんは随分前からテレワークを推進されていたと聞いているのですが、どういったきっかけがあったのですか?
テレワークで重要な意思決定もできる
櫻田:きっかけは、5年ほど前ですかね。海外出張がかなり増えて、1年に100日くらい出ていた時期がありました。そうすると、時差もあるので連絡が夜中などに来る。格好つけて「いつでもどこでも連絡くれていいよ」と言っていたら、気の利かない役員たちが本当に朝の2時や3時に電話してきました(笑)。
私も方々にかけたりしてましたが、その時気づいたんです。余計な事を全部削いでいけば、いわゆるチャットアプリで十分に重要な意思決定もできるということに。「いつもお世話になっております」から始まって、「よろしくお願い致します」というような、Eメールで送るのもスピードが落ちてしまうから不要だと考えました。
こうやって時空を超えて重要な仕事をスピーディーにできることを体感したので、何も社長の執務室に来て仕事をするのが仕事じゃない、どこでもできるようにしようと。
小室:そんなに前から、テレワークで重要な意思決定もされていたのですね! 昨年から今年にかけて、多くの企業がいったんはテレワークしてみたものの、秋くらいに感染が落ち着いたら、ほとんど出社に戻ってしまっていました。そうした様子を見てどうですか。
櫻田:やっぱり残念ですよね。どうしてそうなっちゃうんだろうと思います。例えば、テレワークをした経験のある人に男女問わず聞くと、「テレワークは今後も是非続けていきたい」と言っている。組織は個人情報の管理の問題などを懸念点として挙げるものですが、いろいろ突き詰めていくと、本当の課題は評価。テレワークをしているとサボっていると思われるんじゃないかという不安、つまり上司との信頼関係の無さですね。だから、出社したほうがよいとなってしまうのです。もう1つは、取引先企業からの「おたくだけだよ、来ないの」という圧力。
小室:それですね。
櫻田:そういう言葉を言われちゃうと、「もう行かなくちゃ」となる。取引先に対してもそういうことを言わないことが重要ですね。
小室:本当にそうですね。お互いにコストも時間もかけて対面にこだわるのはやめたいですね。もう1つ、私たちがコンサルしていて、結局テレワークができない企業に共通しているなと思うのが、仕事の見える化、共有化ができていないという点です。
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