2020年にがんで逝った男がブログに遺した生き様 オンラインゲームに生きた「光のお父さん」作者

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最後のツイート。体温は39.5℃と追記で訂正していた(マイディー@Maidy_Maidyより)

亡くなったのは2020年12月6日。「なんとかせねば」と投稿を続ける意思を持ち続けたマイディーさんが、ブログにお別れの言葉を残すことはなかった。

それは、病気の進行が予想以上に早かったことがあるのかもしれない。11月中旬に実施されたFF14のYouTube生配信企画にゲスト登壇したとき、マイディーさんは緩和ケア病棟にいることを公表し、自らの余命を「半年から1年」と明かしていた。その1カ月後の逝去はあまりに早い。

一方で、ギリギリまで生きている側で思考したいという意思も感じられる。2カ月前の日記にはこんな記述もみられる。

<日記を休む選択肢もあるんだろうけど・・・・。
でも、日記は人生そのものですしね、今はそういう時期だから仕方ない。いい時もあれば悪い時もある。
そういう波があってこその日記だと思う事にする。
つまんない日記が続いてごめんなさい。>
(2020年9月9日「まとめたいけど。」/一撃確殺SS日記より)

「日記は人生そのもの」という言葉の重さ

11年以上も毎日更新を続けたブログに書かれた「日記は人生そのもの」という言葉は重い。人生が続いているなら、人生を記したい。そこに自らピリオドを打つことは考えられなかったのではないか。FF14のアカウントが譲渡できないことを承知しながら、「マイディーさん」を終わらせることを考えなかったように。

答えは出ないし、ひとつではないのかもしれない。けれど、残された声と向き合って考えることはできる。

ブログのトップ画面は何とか更新を続けようと腐心する言葉で埋まっている

前進ブログの「一撃確殺の旅路」は利用しているブログサービスが2020年1月に撤退したため、すでに消滅している。「一撃確殺SS日記」で利用しているFC2ブログは健在で、少なくとも2021年12月までは有料版契約が維持されるとみられる。数年スパンでみると確実とはいえないが、11年以上の言葉がいまなおそのまま存在しているのは確かだ。

マイディーさんはかつて、管理人を襲名制にして、ブログの毎日更新が200年くらいずっと続く構想を冗談とも本気ともつかないふうに書いていた。少なくとも、ブログをずっと残したい気持ちは本当だったように思う。マイディーさんのお父さんも、マイディーさんの残したものをこれからも大切にしたいと話していた。

古田 雄介 フリーランスライター

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ふるた ゆうすけ / Yusuke Furuta

1977年生まれ。元葬儀業のライターで、キャリアは15年。デジタル遺品や死後のインターネットコンテンツの行方などを追っている。著書に『故人サイト』(社会評論社)、『中の人』(KADOKAWA)など。

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