2020年にがんで逝った男がブログに遺した生き様 オンラインゲームに生きた「光のお父さん」作者

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再び不安な兆候が表れたのは2020年5月の連休明けのこと。脂っこい食事をすると気分が優れなくなった。しかしこの時期はドラマと映画の脚本を担当した吹原幸太さんが脳出血で急逝し、父に肺がんが見つかるなど、辛い出来事が重なったこともあり、身体からのシグナルは後回しとなる。

入院したのは翌月初旬。大腸付近に腫瘍があることはすぐに判明したが、先の治療で弱っている器官にダメージを与えないために調査は慎重に進められた。その結果、小腸にがんを発見。動脈近くにあり、摘出は不可能だとわかった。やはり動揺は前面に出さない。重い現実を受け止めながら、マイディーさんは冷静に、かつユーモアを交えてRPG風に現状を解説する。

<医療の勇者たちの活躍で魔王は倒され、惑星マイディーの滅びの危機は去った。
しかし、魔王は、死の瞬間、最後の力を振り絞り自らの細胞の1部を近くの茂みに隠していたのだ。
その細胞は、力を蓄え復活の時を待つ・・・・。
それから2年後、すっかり平和になった惑星マイディーに激震が走る!
成長し復活した魔王が、再び大腸を封鎖したのだ。再びライフラインを断たれる惑星マイディー。
医療の勇者たちは再び立ち上がり、復活した魔王を倒そうと攻撃しようとするが・・・
なんと、復活した魔王はただ復活しただけでなく、少しでも傷つくとこの星が爆発するという「生命の樹」と一体化して復活したのだ。
これでは下手に攻撃できない。攻撃が外れ生命の樹を傷つけると、この惑星は死ぬ。
長期戦を覚悟し、とりあえず今回は、立たれたライフラインにバイパスを設け、ひとまず星の命を保つことに専念するのであった。>
(2020年6月18日「全てがあきらかに。」/一撃確殺SS日記より) 

「僕はマイディーだから」

今後の治療方針が固まり、3週間ぶりに退院する。引っ越して間もない自宅に戻り、好きなプラモデルやフィギュアが飾られたデスクに向かい、パソコンの電源を入れてFF14にログインすると懐かしい気持ちになった。

<病院では当たり前ですが、本名で呼ばれていた毎日だったので、ログインしてみんなからマイディーさんと呼ばれると、そうだ、僕は「マイディーさん」なんだと自分を取り戻したような気になれましたw もうどちらがリアルなんだか・・・・。>(2020年6月26日「がんサバイバー。」/一撃確殺SS日記より)
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