目先の利益にとらわれず、原理を追求してきた 東芝機械の八木正幸取締役に聞く

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孤独な環境で、人と話すことの大切さを実感

三宅:八木さんが営業で大事にしていることは何ですか?

八木:お客様が満足することですね。お客様とWin-Winになること。だから機械を売ればいいのではなく、売ってからのつながりを大事にしています。

三宅:お付き合いし、一緒にチャレンジするお客様のイメージはありますか。

八木:あります。一方的に「お願いします、保証条件はこれこれです」と言うお客様とは、チャレンジはしません。チャレンジするときは、相手をよく見ます。原料のことをよく知っているか、基礎的な技術力があるか、といった条件のほか、人格も見ます。一緒に苦労しても、最後は機械メーカーだけの責任にするような人とは付き合いません。リスクを共有してくれる日本のお客様、信用できるお客様とこそ、挑戦することに意味があります。

三宅:八木さんがお客様目線で仕事をするようになったのは、どんなきっかけからだと思いますか?

八木:開発にいたときだと思います。当時は孤独でした。朝から晩まで机に向かってアルゴリズムや理論を考えていて、1日中、誰とも話をしませんでした。それも嫌いではないけれど、私はもともと社交的なタイプだったというのもあり、やはり人と話をするのはすごく大切だなと思ったのです。

それに、お客様であるメーカーは、製造設備には何億円、何十億円もかけますし、原料開発から入れたら何百億円にもなる巨大な投資です。われわれが担っているのはその一部。お客様はわれわれ機械メーカー以上に、ものすごいプレッシャーの中にいるわけです。それなのに、われわれが中途半端な気持ちでいるわけにはいきません。私も、苦しいときにお客様に助けていただいたことがずいぶんあるのです。だから、自分も相手のために何ができるかを考えています。

三宅:機械メーカーは機械を作るわけですが、機械と話すのではなく、お客様と話せということですね。

八木:そうですね。大きな汎用機はプロダクトアウトで作っているけど、われわれの特殊機はそういうものではありません。お客様から何をしたいかという要求仕様が来て、それに対して機械を具現化するわけです。カタログから機械を選んでもらうのではなく、曖昧模糊とした状態から話し合って作り込んでいく。機械を作るのはわれわれだけど、お客様と一緒に、機械に魂を吹き込んでいくのですね。そういう仕事に携わってきたので、より一層、お客様目線になれたのだと思います。

(構成:仲宇佐ゆり、撮影:今井康一)

※続きは7月30日(水)に掲載します。

三宅 孝之 ドリームインキュベータ執行役員

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みやけ たかゆき

京都大学工学部卒業、京都大学大学院工学研究科応用システム科学専攻修了(工学修士)。経済産業省、A.T. カーニー株式会社を経てDIに参加。経済産業省では、ベンチャービジネスの制度設計、国際エネルギー政策立案に深く関わった他、情報通信、貿易、環境リサイクル、エネルギー、消費者取引、技術政策など幅広い政策立案の省内統括、法令策定に従事。DIでは、産業プロデュース事業を統括し、環境エネルギー、まちづくり、医療などを始めとする様々な新しいフィールドの戦略策定及びプロデュースを実施。また、個別プロジェクトにおいても、メーカー、IT/通信、金融、エンタメ、流通、サービスなど幅広いクライアントに対して、新規事業立案・実行支援、マーケティング戦略、マネジメント体制構築など成長を主とするテーマに関わっている。

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