ソフトバンクG、純益5兆円でも不安拭えぬ事情 ビジョンファンド好調も、上場株投資では損失

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ビジョンファンド以外にもリスクはある。資産運用子会社が手がける上場株投資だ。ビジョンファンドの好調な運用成績のお陰で印象がかすんでいるが、SBGの子会社で上場株式投資を進めるSB Northstar(ノーススター)では2021年3月期、デリバティブ関連損失を6107億円計上している。

この上場株投資部門は昨年夏に始まったもので、4.5兆円の資産売却プログラムで生まれた余剰資金の運用手段としてきた。あくまでテスト運用という位置づけで、GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)を中心としたアメリカのIT大手などへの投資を進めてきたが、3月末時点での結果は芳しくない。

今回の説明会で孫氏は上場株投資について言及しなかったが、今後も損失が拡大するようであれば運用方針について説明責任が問われそうだ。

「5兆円や6兆円で満足する男ではない」

ソフトバンク創業の地・雑餉隈(ざっしょのくま、福岡市)の写真をバックに、成長の軌跡を振り返る孫社長(画像:ソフトバンクグループ)

決算発表後の5月13日のソフトバンクグループの株価は12日終値の9180円から5%以上売られる大幅安となった。

孫社長は決算会見でも株式市場からの過小評価に不満をあらわにした。とはいえ、投資による収益が大部分を占める投資会社である以上、SBGの業績は世界的な株式市場の動向に左右されやすく、ボラティリティの高さがリスクとして株価に織り込まれるのは致し方ない。

ソフトバンク創業から40年で到達した、国内企業で過去最大となる純利益4.9兆円。「5兆円近い利益はたまたま」と繰り返し話しつつも、「(自分は)5兆円や6兆円で満足する男ではない」と自信満々だ。

ただ、瞬間風速的な結果で終わってはあまり意味がない。「どれだけ利益を出したかというのは一時的な現象に過ぎない。単なる、”ばくち”ではなく仕組みで進化させていきたい」。説明会の最後にそう話した孫社長。市況に左右されやすいベンチャー投資で、独自の投資エコシステムを確立できるか。難しいかじ取りが続きそうだ。

菊地 悠人 東洋経済 記者

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きくち ゆうと / Yuto Kikuchi

早稲田大学卒業後、東洋経済新報社に入社。流通・小売業界の担当記者を経て2017年10月から東洋経済オンライン編集部。2020年7月よりIT・ゲーム業界の担当記者に。

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