ソフトバンクG、純益5兆円でも不安拭えぬ事情 ビジョンファンド好調も、上場株投資では損失

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ビジョンファンドのようなベンチャーキャピタルは主に、ベンチャー企業に投資し、企業価値を引き上げて株式上場させ、市場で保有株式を売却して利益を稼ぐ。このビジネスを通じて孫社長が目指すのは、一時的な利益を生むことではなく、継続的な利益を生む「金の卵の製造業」(孫社長)を確立することだ。

金の卵の製造業という表現は、今年2月の第3四半期決算説明会でも用いられた。金の卵になりうる企業を発掘し、独自に分析。投資先の組織体制を充実させ、事業成長や次の資金調達へとつなげていく。「今までよりももっとユニコーンを発掘する力が重要になる」(孫社長)と、前のめりな姿勢を示している。

中でも現在注力するのは、2020年に開始した2号ファンドだ。出資コミットメント総額は2020年12月末時点で100億ドルだったが、投資を加速するべく、2021年5月11日時点ではこれを300億ドルまで引き上げている。

「直近3か月で60社、1営業日当たり1社ずつ、投資先が増えている」(孫社長)といい、2号ファンドでの投資社数は2020年12月末の39社から直近95社に急拡大。1号ファンドの投資社数92社をすでに超えている。

過熱気味のベンチャー市場に「反落」のリスク

外部の投資家から655億ドルを集め、総額10兆円規模のファンドとなった1号ファンドとは異なり、2号ファンドは外部投資家を入れず、同社の自己資金で運用している。すでに67億ドルの投資を行い、株価や公正価値の上昇によって保有資産は2021年3月末時点で112億ドルまで膨らんでいる。

「(ウィーワーク問題などもあり)2号ファンドを作ったときには外部資金は集まらなかった。当時は仕方なくやったが、これはこれでよいのではないかと。外部の投資家に無理してお願いしたいということもない。現在のペースで拡大をしていきたい」(孫社長)

1号・2号ファンド、そしてラテンアメリカ地域に投資するLatAmファンドを合わせ、SBGによるユニコーンを中心としたベンチャー企業への投資は現在224社に達している。今後、新規投資を終えた1号ファンドを中心に投資先の株式公開が進むとしており、「昨年を大きく上回る形で新規上場企業がパイプラインに残っている」(孫社長)という。

だが、世界的な株高の影響や過熱気味のベンチャー投資の現状は「反落」のリスクもはらむ。SBGの業績全体に占めるビジョンファンドの割合が増加したこともあり、現在は投資先の企業価値の変動がSBGの業績を直接的に左右する。そのため、期待も不安もなおのこと大きい。

ビジョンファンドについては、2020年3月期には投資損失を計上している。コロナ禍で投資先の多くが経営難に陥ったことが原因だった。こうしたリスクに対して、孫社長は「謙虚に受け止めるべきだと思っている。ユニコーンを発掘する力、組織の充実、資金調達といった継続的に利益を生む仕組みを作っていく」と話す。

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