ソフトバンクがオンライン診療に勝算見込む訳 孫正義氏が巨額を投じた中国企業と合弁設立
コロナ禍で広がりつつあるオンライン診療で、新規参入が相次いでいる。通信大手のソフトバンクが2021年度上半期中にオンライン診療事業を始めることがわかった。手がけるのは、医療サービス子会社のヘルスケアテクノロジーズだ。
同社は昨年7月に健康医療相談アプリ「HELPO(ヘルポ)」の提供を開始。現在は診察ではなく一般的な医療情報をチャット相談の形式で提供しており、自社で採用した数十名規模の医師や看護師、薬剤師が24時間対応する。ユーザーが相談を書き込むと、30秒以内に返信が来る仕組みだ。
4月12日発売の『週刊東洋経済』は「沸騰!医療テックベンチャー」を特集。投資額が10年前の5倍に膨らみ、米中のIT大手なども参入する医療テックベンチャーの最前線を追っている。
「病院に行くほどではないが、グーグルで検索しても的確な答えが見つからないということはよくある。何でも相談を投げ込んでもらって、医療従事者の知見とノウハウを提供するのが狙いだ」。ヘルスケアテクノロジーズの大石怜史社長はそう話す。
医薬品の即日配達も
ドラッグストアで購入できる一般用医薬品のネット販売や病院検索機能も提供し、相談内容に応じて薬の購入や病院での診察を促す。薬の配達地域は東京23区内のみだが、物流ベンチャーと提携し、夕方17時までに注文すればその日の夜21時までに届く。病院検索では「女性の医師がいる」「クレジットカード決済ができる」といった項目でフィルタリングが可能だ。また、ソフトバンクグループ内の検査会社と連携し、新型コロナウイルスのPCR検査も提供している。
現在は法人や自治体を顧客とし、法人では従業員の福利厚生の一環として、自治体では国民健康保険の加入者への健康指導などとして使われている。サービス開始前にはソフトバンクの社員に実証実験を行い、7割が継続的な利用意向を示した。現在のヘルポの利用者数は非公開だが、2021年度中には数十万人規模を目指すという。「将来的には一般消費者への提供も計画している」(大石怜史社長)。
今後展開するオンライン診療の事業は、独自にビデオ通話などのツールを開発するのではなく、医療機関に導入済みのシステムに接続する形になる計画だ。大石氏は、「クリニックごとにオンライン診療アプリを入れるのは不便。患者がヘルポのアプリを開けばワンストップで診察を受けられるようにしたい」と説明する。事前のチャット相談の内容を問診票として医療機関と共有し、診察時間を予測して予約を取りやすくするシステムも開発を進めている。
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