ソフトバンクがオンライン診療に勝算見込む訳 孫正義氏が巨額を投じた中国企業と合弁設立

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コロナ禍での特例措置として、昨年4月に「初診」でのオンライン診療が解禁されてから1年が経過した。初めての診察や新たな症状・疾患の診察の場合、従来は対面が原則だった。だが新型コロナウイルスの院内感染などを防ぐため、厚生労働省は時限措置として規制緩和に踏み切った。コロナ禍でデジタル政策が加速したことを受け、厚労省は初診からのオンライン診療の恒久化に向けた検討を進めており、今秋の指針改定を目指す。これを商機とみる企業は増えている。

ヘルスケアテクノロジーズが提供するアプリ「HELPO」でのチャット相談画面(写真:ヘルスケアテクノロジーズ)

実はヘルスケアテクノロジーズは、ソフトバンクグループの孫正義社長率いるソフトバンク・ビジョン・ファンドが400億円超を出資していた中国のヘルスケア企業、平安好医生(ピンアン・グッド・ドクター)との合弁事業だ。

中国ではオンライン診療や薬のネット販売が急速に広がっている。「平安はヘルスケアのテック企業としてパイオニア。事業のノウハウ面で協力を得ている」(大石氏)。ちなみにへルポのデータはすべて日本国内のサーバーに保管され、平安側がアクセスできない体制を取っているという。

さまざまな企業との提携で事業拡大へ

将来的には健康診断のデータを活用した生活習慣病の予測や、ウェアラブル機器との連携、フィットネス動画の配信なども計画する。「すべてを自分たちではやらない。ベンチャーも含めてさまざまなソリューションを持つ企業と共創したい」と大石氏は話す。

ソフトバンクは2017年に新規事業開発を担う「デジタルトランスフォーメーション本部」という部門を設立。ヘルスケアテクノロジーズもこの中から生まれた新規事業の1つだ。河西慎太郎本部長は組織の狙いについて、「ソフトバンクにとって次の柱になるものを育てたい。単にベンチャー投資をやるということではなく、パートナー企業を探して社会課題を解決できるような事業を一緒に作っていく」と説明する。

「社内のハイパフォーマーを集めた」(河西氏)という本部のメンバーは、発足時に120人だったのが直近で240人まで増えた。そのうち半分がエンジニア、もう半分が事業企画やバックオフィスの人員が占めるという。ヘルスケア以外にも、物流やスマートシティなどの分野で事業提携や合弁設立などを進めている。

データやテクノロジーの力で医療やヘルスケアが大きく変わろうとしている。激しい競争の中でソフトバンクはどこまで存在感を示せるか。

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中川 雅博 東洋経済 記者

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なかがわ まさひろ / Masahiro Nakagawa

神奈川県生まれ。東京外国語大学外国語学部英語専攻卒。在学中にアメリカ・カリフォルニア大学サンディエゴ校に留学。2012年、東洋経済新報社入社。担当領域はIT・ネット、広告、スタートアップ。グーグルやアマゾン、マイクロソフトなど海外企業も取材。これまでの担当業界は航空、自動車、ロボット、工作機械など。長めの休暇が取れるたびに、友人が住む海外の国を旅するのが趣味。宇多田ヒカルの音楽をこよなく愛する。

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