田村淳が伝えたい「悲しいだけの葬儀」の違和感

疑似体験できるように描写した母と最期の別れ

書籍タイトル『母ちゃんのフラフープ』は、母から送られてきた動画に込められたメッセージを、息子ならではの視点で受け取ったところからきている。

田村淳(たむら あつし)/タレント。1973年、山口県下関市生まれ。1993年、田村亮と「ロンドンブーツ1号2号」を結成。バラエティー番組や経済・情報番組などに出演。2019年4月、慶応義塾大学大学院メディアデザイン科に入学。2021年3月、同大学院を修了(写真:@yoshimoto)

「母ちゃんは死ぬ気でフラフープを回している動画を僕ら家族に残しました。おばあちゃんがフラフープをただ回している動画ではなく、田村家が未来永劫ずっと続いていくんだよってメッセージを伝えたかったのだと思います」

コロナ禍で病院の面会制限もあり、身内であっても病室には1人しか入れてもらえない日々が続いた。時を同じくして、淳の次女が生まれた。母・久仁子には死ぬまでに、淳の次女をこの手で抱っこしたいという願望があった。

それと、もう1つどうしても譲れない思いとして、最後になるかもしれない72歳の誕生日を自宅で祝いたいというものがあった。

「痛い、苦しい」と言ったら、一時退院の許可が下りないかもしれないと考え、2週間ものあいだ頑張って痛みをこらえ最後の力を振り絞った。無事に家に帰り、念願の淳の次女とも対面を果たした。

「一時帰宅のため、畳だった部屋をフローリングに改装し介護ベッドを置けるようにしました。待ち望んでいた次女をようやく抱っこできました。死に対して後ろ向きになることなく、本人の意志、尊厳を家族も同様に重視するスタンスでいくと決めていました。母ちゃんと家族で話し合いができていたので、一時帰宅に関しても意見がパッとまとまりましたね」

痛みを伴っても「最後の会話」で伝えたかったこと

母との最期の日々を回想しながら、献身的に支えてくれた妻への感謝の言葉が続く。

「僕がなかなか田舎に帰れなかったとき、妻は僕が不在でも率先して子供を連れて田舎に帰って母とコミュニケーションを取ってくれました。本当にありがたかった。母ちゃんもうれしかったと思います。なかなか行けないと思う。僕が反対だったら、嫁の実家に嫁がいない状況で娘だけ連れて行くって考えられない(笑)」

一時帰宅した母と淳が部屋で2人きりになった。こんなときじゃないと語れない思いの丈を語り、帰り際に骨ばった身体を強く抱きしめて感謝の気持ちを伝えた。これが、母・久仁子と淳の最後の会話だった。

本書では、赤裸々にその様子が描写されている。母との最期の別れを書くことは、淳にとっても痛みを伴う作業ではあったが、それでも伝えたいメッセージがあった。

「母ちゃんと別れる際の描写は苦しかったです。書きながら何度も泣いてしまい、冷静な思考になれないのでいったん筆が止まったこともありました。でも本で描くことで、あのときには感じられなかった部分を感じ取ることもできた。ああ、そういう感覚になるのか、と読者に疑似体験として細かく伝えられるようにと思って、悲しいけど前に進んでいく気持ちで書き記しました」

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