田村淳が伝えたい「悲しいだけの葬儀」の違和感 疑似体験できるように描写した母と最期の別れ

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淳が遺書動画サービスを立ち上げた背景には、自分自身が親になったこともある。子どもを授かって初めて知った感情がたくさんあった。子どもたちに親がどう生きてきて、何を考えてきたのかを伝えたいと思った。最愛の娘との別れも、ある日突然訪れるかもしれない……。ただその日を想像するとき、「別れが悲しい」だけの葬式はイメージしていない、という。

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「僕が母ちゃんプロデュースの葬式に出て思ったのが、母ちゃんってこんな人間だったよね、おもしろいことを仕掛けてくるな、死ぬからこそできることがあるな、といったことでした。うちの母ちゃんは、これまでアップデートされてこなかった“悲しい葬儀”の形に現場で抗い、参列した人に故人の遺志を伝えたような……気がしています。

自分の娘と別れるときも、父ちゃんってこういう人間だったよねって伝わるような葬儀をしたいと思っています。信頼している人に、こういう葬儀にしてほしいってすでに伝えています。まだ娘は4歳で葬儀を取り仕切るのは難しいので。僕が愛した本、横山光輝の『三国志』60巻、よく観ていたAVのタイトル、その辺も全部ひっくるめて田村淳はこういう人間だったことをショーケースの中で紹介できたらいいな」

「自分軸」で生きる大切さ

タレント、司会者、作家、ラジオパーソナリティー、YouTuber、会社経営者などの顔を持ち、さまざまな分野で活躍している。一方で、「アイツ一体何がしたいんだ?」と批判する人もいる。そんな淳が仕事でも日々の生活でも大切にしているのは、「一隅を照らす」という言葉だ。

「僕じゃないと見つけられない部分、引き上げられない部分をすごく意識して生きている」

新型コロナ感染症の影響で、人々はさまざまな価値観や多様な生き方に揺れている。そんな混沌とした時代のなかで「人間の唯一の義務は、自分らしくいること」だと淳は言う。

「自分の人生なのに、他人軸で生きている人が多い気がして。僕は人生を自分軸で生きたいので、他人にこう思われるから止めよう、こう思われたいからこう動こう、などを極力なくしたいと思っています。

あいつの生き方は、確かに自分軸で生きている、人間が生きるってそういう事だよね、といった感じに思ってもらえるような人生にしたいですね。周りで実行している大人が少ないので、みんながみんな納得できなくても、少なくとも自分の娘に対しては行動で示し伝えたい」

淳が幼少時代、母は何も強制しなかった。かけられた言葉は「興味や関心があることは、自分で見つけていきなさい」。この母からの教えを、淳は今もこれからも道標としていく。(敬称略)

池田 鉄平 ライター・編集者

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いけだ てっぺい / Teppei Ikeda

Jリーグ、国内、外資系のスポーツメーカー勤務を経て、ウェブメディアを中心に活動。音楽一家で育ち、アーティストとしてインディーズでアルバムリリースも経験。スポーツ、音楽、エンタメを中心に取材活動を行っている。

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