隠れ暮らす「女性ホームレス」密着して見えた実態 京大准教授が7年かけて問題点を浮き彫りに

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――丸山さんが調査に着手する2003年まで、ホームレスと言えば男性の問題として認知され、女性のホームレスはほとんど注目されていませんでした。そんな中、7年もかけて綿密な調査を続けた。京都から東京へは夜行バスで通っていたと聞いています。

京都大学の大学院に通っていたときですね。約250人がテントで暮らしている東京都内の公園に何度も通いました。そこでは女性が10人ほど暮らしていて、顔見知りになった4人の女性たちと数年間にわたって人間関係をつくり、調査を行いました。

テントは平均で3畳くらいの広さです。中には洋服や布団といった日用品があり、発電機や電池式のテレビを置いてあるテントもありました。日雇いやアルバイト、保険の外交員、ビルの清掃、廃品回収などで現金収入を得ている人もいました。

食事はコンビニなどで廃棄物として出されるもの、福祉事務所で配布されるもの、炊き出しなどで確保。カセットコンロを使って自炊する場合も多いです。日用品は自分たちで購入するか、定期的に訪れるボランティアや教会に頼んで手に入れ、生理用品など男性に頼みにくいものは女性ボランティアに頼んでいたようです。

丸山氏が調査した東京都内の公園の様子。約300のテントがあった。撮影は2005年(写真提供:丸山里美氏)

何度も足を運び、一緒に時間を過ごす

――公園以外では、どんなところで調査されたのですか。

野宿者だけでなく、住居のない状態(=ホームレス)の女性たちが滞在する都内の福祉施設に泊まり込み、そこで最初はボランティア、後にアルバイト職員として働きながら、並行して聞き取り調査をしました。大阪では、女性野宿者の支援グループをつくって、その活動と並行して調査もしていました。

(こうした手法を取ったのは)まず、一緒に時間を過ごしたいと思ったからです。それに、1回だけのインタビューでわかることは限られています。何度も足を運んで人間関係をつくって話を聞けば、その分、調査は深みのあるものになると考えました。

東京で調査したのは、京都や大阪ではホームレスの女性になかなか出会えず、東京に行き着いてしまったということですね。

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