米金融当局のインフレ兆候は「一時的」は本当か 株式市場に波乱呼ぶ当局の認識への市場の懐疑

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米連邦準備制度の当局者はインフレ率が今年上昇しても一時的なものになる見込みだとの認識を何度も繰り返し示しているが、金融市場のトレーダーは納得していない。

市場は物価上昇圧力の幅広い兆候に目を奪われている。銅や木材などの一次産品価格は最高値を付け、債券市場では向こう10年間のインフレ期待が8年ぶり高水準に達した。物価圧力へのこうした注目は株式市場の波乱の引き金となり、CBOEボラティリティー指数(VIX)は11日、3月以来の高水準となった。 米企業の直近の決算発表に関する電話会見では、インフレという言葉が再び流行し、バンク・オブ・アメリカ(BofA)によれば、1年前に比べて使用回数は9倍に増えた。先週発表された4月の米雇用統計では、非農業部門雇用者数の伸びがエコノミスト予想の4分の1にとどまったが、それさえも企業が労働力確保で賃上げを余儀なくされる兆候と受け止められている。

BofAの米国株・クオンツ戦略責任者、サビタ・スブラマニアン氏は7日にブルームバーグテレビジョンに対し「インフレリスクは注視したいものだ」と述べ、「それが一時的なものになるかどうかは分からない」と語った。

エコノミスト予想では、12日発表予定の4月の米消費者物価指数(CPI)は前年同月比3.6%上昇と見込まれている。昨年は新型コロナウイルス感染症(COVID19)対策のロックダウン(都市封鎖)が始まり物価に下押し圧力が掛かっていた。

政策当局者らは自らの主張を崩していない。パンデミック対策で前例のない規模の財政出動が行われるにもかかわらず、タカ派として知られる当局者でさえここ数週間に、インフレが制御不能になる可能性は低いと発言。パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長と米大統領経済諮問委員会(CEA)のラウズ委員長はいずれも、米経済の一部で顕在化しているインフレは「一時的なものだ」と述べている。

だが、重要な疑問はその「一時的」という表現がどの程度の期間を意味するのかだ。現時点でその答えは恐らく知り得ないだろうが、過去のリセッション(景気後退)はいくつかのヒントを与えてくれる。

リセッション後の商品相場

最近の物価上昇が主に商品価格主導だとすれば、それは原料価格上昇がどれだけ続くかという問題になる。2009年の景気回復を道しるべとすると、原材料の需要とのその価格は2年間にわたり大幅に高まり、商品相場が頭打ちするまで世界のインフレ率を押し上げた。

当時の物価上昇は、主に中国の大規模インフラ計画が原動力だったが、中国が10年余り前に果たした役割を今回は多額の投資計画を打ち出したバイデン政権率いる米国が担うことになりそうだ。その論理では「一時的」は2年を意味する可能性がある。

半導体不足

しかし、木材や銅などの一次産品だけがインフレを押し上げる要因ではない。携帯電話や自動車、冷蔵庫などあらゆる製品に使用される半導体も大きな役割を果たしている。

ホンダやBMWなどの自動車メーカーは半導体不足で生産停止を余儀なくされている。その重要性を考えれば、フィラデルフィア半導体株指数と、債券市場のインフレ期待を示す10年物ブレークイーブン・レートに正の相関関係があることは驚きではない。両指数はここ1年間、足並みをそろえた動きを見せている。

ブレークイーブン・レート

債券市場はあらゆる物価圧力を嗅ぎつけており、それを反映するブレークイーブン・レートはインフレに関する投資家の想定を左右する。向こう10年のインフレ期待を示す10年物ブレークイーブン・レートは13年3月以来の高水準に近い約2.54%。5年物レートは今週2.78%と、06年以来の高水準に達した。

賃金圧力

一部の投資家やストラテジスト、政治家からは、先月の雇用の伸びが予想を大幅に下回ったことから読み取れる真のメッセージは、失業者に就労を促すコストが上昇する見通しだとの声が聞かれる。政府の失業保険給付上乗せで以前の賃金の魅力が低下したことも一因だ。賃上げ圧力が生ずれば、財やサービスの価格に反映されてインフレ率をさらに高める可能性がある。

 

原題:Transitory or Not, Signs of Inflation Are Roiling Asset Markets(抜粋)

著者:Liz McCormick、Kriti Gupta

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