「この人、話しにくいなぁ」は相手に伝染している 「雑談はしなくていい」と言える心理学的理由

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雑談も同じです。得意な人はその能力を生かせる場所へ行けばいいし、苦手な人は、ほかの得意なことを生かしたほうが生きやすいはず。

「雑談が苦手」はあなたの特徴であり、欠点ではありません。周りの人と比べて「私も得意にならないと……」と焦る必要はないのです。

ここまでお伝えしたように、そもそも雑談は「しなければならないもの」ではないのです。

リラックスしながらする雑談にはガス抜き作用がある

では、日々の中で、雑談の機会をなくすのがいいのかというと、私はそう思いません。なぜなら、プレッシャーを感じないリラックスした雑談であれば、多くのメリットを得られるからです。

雑談は、カタルシスといった「心の浄化作用」を持っています。職場であれば、仕事とは関係のない雑談がガス抜きになって、頭を休ませることができるのです。

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あなたにとってストレスのもとである雑談も、うまく使えば、日々のストレス解消につなげることができます。

これは個人単位の話ではありません。雑談によって、職場全体の活性化度合いや幸福感が高まることもわかっています。最近は、在宅勤務やテレワークに伴うオンライン上でのやり取りが増えたぶん、雑談する機会が一気に減ったという人も少なくありません。

その影響もあり、ストレスをうまく発散することができず、しんどさを抱え込んでいる人が増えています。このことからも、雑談をするメリットがあることは明らかです。

このように、「ストレス0の雑談」は、私たちの日々に大きな効果を与えてくれるのです。

「雑談が苦手」だと感じているあなたも、仲のいい友人や家族とたくさん話をして、幸せを感じたことがあるはずです。誰かと楽しく話をしたことで、その1日に充実感を覚えた人もいるでしょう。

ストレスを感じないコミュニケーションは、本来楽しいものです。雑談を「ストレスを生み出す毒」から「ストレスを解消する薬」にすることで、あなたは今よりも生きやすくなるはずです。

井上 智介 産業医・精神科医

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いのうえ ともすけ / Tomosuke Inoue

島根大学医学部を卒業後、さまざまな病院で内科・外科・救急科・皮膚科など、多岐の分野にわたるプライマリケアを学び、2年間の臨床研修を修了。その後は、産業医・精神科医・健診医の3つの役割を中心に活動している。産業医として毎月約40社を訪問。精神科医・健診医としての経験も生かし、健康障害や労災を未然に防ぐべく活動。精神科医として大阪府内のクリニックにも勤務。うつ病、発達障害などを中心に、精神科疾患全般に対応。すべての人に「大ざっぱ(rough)」に、「笑って(laugh)」人生を楽しんでもらいたいという思いから「ラフドクター」と名乗り、SNSや講演会などで心をラクにするコツや働く人へのメッセージを積極的に発信中。

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