FRBのノイズになるイエレン財務長官の言動 前議長の隠然たる影響力、避けたい「院政」状態
アメリカのイエレン財務長官が5月4日(現地時間)の米誌インタビューで「アメリカ経済が過熱しないよう確実を期するには、金利はやや上昇せざるをえないかもしれない」などと述べたことが報じられ、話題となった。これを受けてアメリカの株価が値崩れするなど市場は明らかに動揺を示したからだ。
マイナス成長を余儀なくされている日欧を横目に、アメリカの1~3月期実質GDP(国内総生産)成長率は前期比年率6.4%と先進国の中でも頭抜けて高いものとなった。そのうえでアメリカはまだ行動制限解除の余地を残しており、今後の景気加速は当然視されている。実体経済が地力を解放できそうな見通しの下で、財政出動も全力でアクセルを踏むことが既定路線であり、むしろ名目金利が上がらないほうがおかしいともいえる状況だ。イエレン長官は正直な本音を吐露したまでだろう。
イエレン氏が金利政策に言及するのはヤバい
とはいえ、就任以降、筆者が気になっていたことだが、金利を筆頭とする市況に関してイエレン長官の言動はクローズアップされすぎている。イエレン長官としては聞かれたから答えただけなのかもしれないが、現実に金利に関する言及が相場を動かしてしまっている。イエレン氏は前FRB(連邦準備制度理事会)議長であるが、これを退き今は財務長官なのであって、金利に関する発言は院政を敷いているような印象も持たれかねず、パウエルFRB議長からすればあまり気持ちのよい状況ではあるまい。
現在、FRBは量的緩和縮小(テーパリング)へ動くのではないかとの市場の思惑を鎮静化することに日々努めている。その傍らで前FRB議長の財務長官が「金利は上がりそう」と情報発信することは「市場との対話」に照らしても適切な状況とは言えまい。
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