新幹線vsあずさ、どっちで行く?長野の鉄道事情 目指すは長野か松本か、地元私鉄も見逃せない

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中央線特急「あずさ」はその一部が大糸線にも直通する。朝8時ちょうどのあずさ5号がそれで、終点は大糸線の南小谷(みなみおたり)駅。大糸線は松本から南小谷までが電化されている。

大糸線=ローカル線という印象も強く、事実その通りでもあるのだが松本側は通勤通学路線としての役割もあり、白馬などの観光地も多い。案外にローカルではない顔も持っている。大糸線が究極のローカル線になるのは、南小谷駅より北のJR西日本区間である。

大糸線の臨時観光列車「リゾートビューふるさと」(筆者撮影)

大糸線でそのまま県境を越えてもいいが、やはり最後にはいかにも長野県らしいあの路線を行かねばならぬ。松本駅に戻って篠ノ井線だ。

篠ノ井線は塩尻―松本―篠ノ井間を走る。名古屋からやってくるJR東海サイドの中央線特急「しなの」もこの篠ノ井線で長野を縦断。長野・松本という長野県二大都市を結ぶ役割もあり、さらに途中には姨捨駅の絶景車窓。ほとんどが山岳地帯でその狭間にいくつかの盆地が点在するという、長野らしさが存分に詰まった路線である。

といっても、長野と松本の間にはもちろん山が横たわっているので、篠ノ井線はその間をいくつものトンネルで抜ける。長野―松本間においては特急「しなの」がむしろ中心で普通列車は日中1時間半ほど間隔があく。特急は1時間1本ペースだから、「しなの」は長野と愛知を結ぶという長距離特急であると同時に、長野県内において長野と松本という二大都市の相互連絡という任務も帯びているというわけだ。

長野・松本両ルートを結ぶ路線

篠ノ井線のハイライトはなんといっても姨捨(おばすて)駅。特急は素通りしてしまう小さな駅だが、普通列車はきちんとスイッチバックをしながら進んでゆく。この駅からの車窓は日本三大車窓の1つと言われ、眼下には見事に広がる善光寺平。信州の覇権を目指して武田信玄と上杉謙信が戦った川中島の戦いの舞台も、この善光寺平である。

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そうしたわけで、篠ノ井線は長野ルートと松本ルートを互いに結び、どちらのルートからも長野県のすべてを楽しむことができるあんばいになっている。もう1つ、小海線も長野ルートと松本ルートを結ぶ。どちらを選んでもそれぞれの魅力があるし、むしろどちらも乗ってみるのが長野県の鉄道の旅を楽しむには欠かせないのかもしれない。

そして新幹線や中央線を除けば、長野県を出入りする路線はどれもこれもが秘境を走るローカル線。各都市には小さな私鉄があって、それぞれが個性を放つ。こうして考えると、長野はもしかすると鉄道大国、なのかもしれない。

鼠入 昌史 ライター

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そいり まさし / Masashi Soiri

週刊誌・月刊誌などを中心に野球、歴史、鉄道などのジャンルで活躍中。共著に『特急・急行 トレインマーク図鑑』(双葉社)。

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