台風で橋崩落、上田電鉄「復活」まで532日の軌跡 濁流にのまれた「赤い鉄橋」を再び電車が渡った
2019年10月の台風19号による豪雨で千曲川にかかる鉄橋「千曲川橋梁」が崩落し、一部区間の運休が続いていた長野県のローカル私鉄、上田電鉄別所線。532日間にわたる復旧工事を終え、ついに3月28日、全線の運転を再開した。
復旧後、乗客を乗せて橋を渡る「1番列車」となったのは、本来の始発よりも早い上田駅5時55分発の臨時電車。ホームで開いた出発式で同駅の児平高明駅長は「非常に胸が熱くなっております」と感極まった声であいさつし、「鉄橋が落橋したのを見て、言葉を失いました。皆さまの思いが赤い鉄橋を再び架けていただき、さび付いたレールが再び輝きを取り戻すことができました」と、被災からこれまでの日々を振り返った。
5時55分。「出発、進行!」児平駅長の合図とともに、193人を乗せた1番列車は拍手に包まれながら高架の上田駅ホームを発車。夜明けの街に1年5カ月ぶりの轟音を響かせ、赤い鉄橋を走り抜けた。
やっぱり「赤い鉄橋を渡る電車」
再開初日は時折雨の降るあいにくの天候だったが、運賃無料で開放されたこともあり、多くの地域住民や鉄道ファンらが復活を祝った。
千曲川の堤防で鉄橋を渡る電車を眺めていた小学2年生の男の子は「朝から何度も見てる。やっぱり赤い鉄橋を渡る電車がいい」と笑顔。終点の別所温泉駅には、電車に乗ろうとする人々が駅外の歩道まで続く長蛇の列をつくった。同駅近くに住むという80代の男性は人の多さに驚きながら「やっぱり全線復活への期待は大きかったですね。観光客もまた戻ってくれれば」と語った。
上田電鉄によると、3月28日の上田駅乗降客数は約7800人。通常は1日3000人程度といい、「花火大会などのときよりも多かった」(同社)。再開を心待ちにしていた人々の多さがうかがえる。
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