台風で橋崩落、上田電鉄「復活」まで532日の軌跡

濁流にのまれた「赤い鉄橋」を再び電車が渡った

だが、その後の動きは早かった。関係者がまず取り組んだのは、利用者の足を維持するための代行バスの運行だ。被災2日後の10月15日には、途中駅の下之郷駅と上田駅の間でバス運行を開始。翌月には鉄道の再開区間が伸び、バスによる代行区間は上田駅と橋を挟んで隣の城下駅間に短縮した。代行バスの運行費用には、台風19号災害を受けて国が新たに設けた支援制度が活用された。

千曲川橋梁の復旧と全線再開に向けた動きも被災直後から進んだ。崩壊した堤防の応急復旧は11月3日に完了し、同月22日には上田電鉄が「時期を明確に示すことはできない」としつつも、2021年春ごろの運行再開を目指す方針を同社ウェブサイトで発表。12月からは崩落した橋桁の撤去が始まった。

そして同じころ、復旧費用をめぐる調整も進展しつつあった。

鉄橋の保有は上田市に

千曲川橋梁の復旧事業費は約8億8300万円。費用は、実質的に国が97.5%を負担する「特定大規模災害等鉄道施設災害復旧事業費補助」を活用した。

2016年4月の熊本地震で被災した第三セクター、南阿蘇鉄道の復旧に初めて適用された支援策で、国と地方自治体が2分の1ずつ費用を負担したうえで自治体分の95%を交付税措置し、実質的に地方自治体の負担は2.5%に抑えられるという仕組みだ。上田市交通政策課の山田係長によると、11月初旬から同補助の活用に向けた調整を始めたという。

同補助は、今後の長期的な運行確保に関する計画策定とともに、地方公共団体などが鉄道施設を公有化する、いわゆる「上下分離」が適用の要件となる。別所線の場合は上田市が千曲川橋梁を上田電鉄から譲り受けて公有化し、路線全体でなく鉄橋の部分だけを上下分離化。復旧は、実際の工事は上田電鉄に委託したものの、市が事業主体となって進めた。

市が鉄橋を公有化するだけでなく復旧工事の事業主体となったのは、費用に地方債を活用できるかどうかが背景にあったという。これまで復旧に当たって同補助を適用した鉄道は第三セクターだが、上田電鉄は純民間の鉄道会社。市によると、自治体は民間鉄道に対する補助金に地方債を充てることができない。一方、市が事業主体となれば、市の負担分には地方債を充てることができる。

そこで、鉄道事業者でなく市が復旧の事業主体となり、自治体負担分は地方債を活用して賄うという方法をとった。補助の要綱にはこのような考え方はなく、前例がなかったという。

千曲川橋梁の復旧費用や工事をめぐる議案は、2020年1月24日の上田市議会1月臨時会で全会一致で可決。「赤い鉄橋」の復旧に向けた動きが本格的に走り出した。

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