台風で橋崩落、上田電鉄「復活」まで532日の軌跡 濁流にのまれた「赤い鉄橋」を再び電車が渡った

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上田電鉄別所線は、上田駅(長野県上田市)と別所温泉(同)を結ぶ全長11.6kmのローカル鉄道。1921年に最初の区間が開業し、今年6月で100周年を迎える。過去に廃線問題も浮上したものの、地元の強い存続要望により、公的支援を受けながら運行が続いてきた。

全長224mの赤いトラス橋、千曲川橋梁は同線のシンボルであるとともに、千曲川左岸の街と上田駅や上田城などのある右岸を結ぶ鉄道の生命線。2019年10月12日から13日にかけて東日本各地を襲った台風19号による豪雨は、その橋を堤防もろとも崩落させた。

「今まで経験した増水じゃない」

「上田はもともと雨の少ない地域。やんで川の水が引いてくれればなんとか……と思っていた」。上田電鉄の矢沢勉運輸課長は、被災前日の10月12日を振り返ってそう語る。同日、電車は豪雨のため15時過ぎで運休。矢沢課長は警戒のため、運休直前の電車に添乗して千曲川橋梁を渡ったが、これが被災前に橋を渡った最後の電車になった。

その後も雨は激しく降り続いた。気象庁のデータによると、同日の上田の1日降水量は観測史上2番目となる143.0mmを記録。「今までに経験している大雨や増水の状況じゃない」と、夜通し警戒に当たっていた上田市交通政策課の山田晃一交通政策担当係長は感じたという。翌13日早朝には千曲川橋梁のある左岸の堤防が次第に崩れ始め、そして8時ごろ、堤防とともに橋が崩落したことが確認された。「どうしたらいいのか、いったいどうなるのか、その時点ではまったくわからなかった」と山田係長はいう。

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