私は鉄道写真を撮る目的で人の家の樹木を伐採している人の姿を見かけたことはない。しかし、もう15年以上前に磐越西線のトンネル近くで列車の撮影をしたときのことを思い出す。有名撮影地ではなかったが、トンネルの入り口の上のあたりに1人撮影者がいた。
撮影場所を探しているようだったが、しばらくするとナタのようなものを持ってきて生えている雑木の枝を払い始めた。季節は晩秋で樹木は落葉していたが、枝が撮影に邪魔だったのだろう。用意のよさに驚いた。
トンネルの上の雑木でもあり、誰の物でもない樹木なのかもしれない。雑草などが邪魔だったりすると踏み倒したくもなる。住宅に隣接して植えてあって手入れされている樹木や、生け垣のように明らかに人の持ち物とわかるような樹木であればともかく、そうでない樹木であれば、撮影に邪魔と思って軽い気持ちで伐採したり枝を払い落したりしたくなることもあるだろう。
誰の所有物かわからない
しかし、樹木に名前が書いてあることはほとんどないし、自然の無主物としての樹木と人の所有物としての樹木を完全に判別することは難しいこともある。
大都市圏の住宅地であれば土地の境界は塀や柵で明確にされていることも多いが、地方では必ずしもそうではない。どこまでが誰かの私有地かわからないこともある。うっかりと誰かの樹木を伐採したり枝を切ってしてしまう可能性もないわけではない。
法律上、人の物を損壊した場合には器物損壊罪(刑法第261条)に処せられる。3年以下の懲役または30万円以下の罰金、もしくは1万円未満の科料である。人の樹木も人の物なので、勝手に伐採すれば器物損壊罪になる。ただし、わざと損壊した場合のみが対象になるから誤って人の物を壊した過失犯は処罰されない。撮影の最中、うっかり足を滑らせて樹木にぶつかって樹木をなぎ倒してしまった場合には器物損壊罪には問われない。
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