意外にハードル低い?「電車の貸し切り」利用法 路面電車やローカル私鉄は低料金で実現可能

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では、JRの車両を貸し切るにはどうしたらいいのだろうか。

JR東日本に問い合わせてみると、定期列車を一編成すべて貸し切りにするという扱いは現実的に難しく、専用の臨時列車を設定した上で運行することが通例になっているという。

同社の「旅客営業規則」によると、列車を貸し切りにするには旅客車5両以上の編成が必要だという。貸切乗車券は規定の人数の運賃と料金を支払わなくてはならない。例えば、普通の座席車なら1両あたり80人の乗車を必要とする。また、営業キロ50km以下の場合でも、50km分の運賃を支払わなくてはいけない。

申し込みは、団体乗車券の委託販売を行っている旅行会社の窓口を通じて行うが、申し込みを受けてから実際の車両や乗務員の手配が可能かどうかを調整するため、十分な準備期間を必要とするという。最小利用人数は定員の9割として算出されるため、実際の利用人数がそれを下回っても最小利用人数分の料金を払わなくてはならない。また、所定の運賃・料金だけではなく、食事やアテンダントによるサービスが含まれる場合は、サービス料金も含むとのことだ。

貸し切り列車でイベントはいかが?

このほか、特急車両やグリーン車を利用する場合など、特急料金や急行料金、あるいはグリーン料金を追加で払わなくてはならないこともある。ちなみに「急行料金」は急行列車でなければ設定することはないというが、現在、JR線には定期列車の「急行」はないので、実際に適用されることは恐らくないだろう。団体列車の規定上は「急行料金」が残っているのは興味深いところだ。

JRや大手私鉄は費用面で難しかったとしても、路面電車やローカル私鉄はウェブサイト上などで積極的に貸し切り運行をアピールしていることも多く、比較的手が届きやすい。収束の兆しが見えないコロナ禍だが、状況が落ち着いたらイベントなどを開きたいと考えている人は、貸し切り列車の利用を検討してみるのはいかがだろうか。

なお、コロナ禍の影響などで貸し切り運行の受付を中止しているケースもあるので、実際に利用する場合は鉄道各社に確認することが重要だ。

小林 拓矢 フリーライター

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こばやし たくや / Takuya Kobayashi

1979年山梨県甲府市生まれ。早稲田大学卒。在学時は鉄道研究会に在籍。鉄道・時事その他について執筆。著書は『早大を出た僕が入った3つの企業は、すべてブラックでした』(講談社)。また ニッポン鉄道旅行研究会『週末鉄道旅行』(宝島社新書)に執筆参加。

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