うつではないのに「やる気が出ない状態」の正体 幸福とうつの間にある精神的に空虚な状態

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さらにそれは、「気分はどう?」という問いかけに対する社会的に容認される返答を可能にする。

「最高」、もしくは「まずまず」といった返答の代わりに、「正直言うと、今虚脱感がある」と答えたらどうだろうか。それは有毒なポジティブさ、言い換えると典型的なアメリカ人のようにつねに明るくふるまわなくてはいけない、という圧力に対して、新鮮に引き立つものとなるだろう。

自分の辞書に虚脱感という言葉を加えることで、それがあちこちに存在するということに気づくだろう。それは午後の短い散歩で気分が落ち込んだ時に表われる。それはオンラインでの学校の授業がどうだったか聞いた際の子供の声にも表われる。それは、『ザ・シンプソンズ』において登場人物が「あーあ」というたびに表われる。

虚脱感に対抗するフロー体験

さて、これに対して私たちは何ができるだろうか。「フロー(流れ)」と呼ばれる概念がその対策となり得るかもしれない。フローとは、時間、場所、そして自身の感覚が溶けてなくなるような、意味のある挑戦、もしくは、瞬間的な絆においてのとらえどころのない吸収状態を指す。

パンデミックの初期には、健康状態の最適な計測器は楽観でも注意深さでもなかった。それは流れだった。自身のするべきことに没頭している人ほど虚脱感を回避し、パンデミック以前の幸福感を維持することができた。

早朝に言葉遊びをすることで、私はフローに解き放たれるのである。深夜にネットフリックスを鑑賞しまくることも、時に同じ効果をもたらす。それは自身を物語の中に連れて行ってくれるのである。

新しいことへの挑戦、楽しい経験、そして意味のある仕事が虚脱感に対しての有効な治療法である一方で、集中力がない状態でフローを見出すのは困難なことである。これはパンデミック以前に人々がいつもメールをチェックしたり、タスクを切り替えたりしていた時も問題だった。この1年で、多くの人は子供、同僚、そして上司による妨害に苦しんできた。あーあ。

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