「自分だけの強み」を見つけるための17つの質問 自分の「才能のタネ」を見つけられる人の視点

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僕が以前に勤めていた、Fitbitでの例で端的に説明します。

Fitbitは、2014年に日本法人を立ち上げた当時、Apple Watchよりも高いシェアを誇り、ウェアラブルデバイス市場で世界1位でした。しかし、日本では知名度がゼロに近かったのです。

本国であるアメリカは、人々が日頃から運動を生活に取り入れ、フィットネス意識が高いので、この製品を売るのにも、フィットネス、エクササイズ、ランニングといった言葉を用いて活動をしていました。

もちろん、日本でも、これらの言葉は日常的に使われていますし、運動を習慣にしている人もいます。しかしながら、アメリカと比較すると、こういった習慣のある人口は圧倒的に少なかったのです。

そこで僕たちは、フィットネスと健康との違いを明確にしました。

フィットネスとは、運動をするための身体能力を高めること。それに対して健康とは、身体のすべての機能が最適な状態にあること。このように定義して、アメリカはフィットネスに関心が高く、日本は健康に関心が高い、と仮定したのです。

日本では、ウォーキング、睡眠、理美容。Googleトレンドで調べると、その傾向は如実に表れていました。そこで、すべて健康という方向から消費者に仕掛けることにしたのです。つまり、アメリカのようにフィットネス、エクササイズ、ランニングから入るのではなく、日本の実情に合わせ、ウォーキング、睡眠、理美容といった健康管理から入ったのです。

すると、仮説どおり、日本人の“腹落ち度”は圧倒的にいいものとなりました。僕が辞めた後、2019年にFitbitはGoogleに買収されるという報道がありましたが、運動、食事、体重、そして睡眠を記録することで、健康を改善する製品として、日本でも広く知られるようになりました。とくに導入している企業では、従業員の健康に対する意識を向上させ、日々の行動変革へ導く役割を果たしています。

僕は幸運にも、こういった海外で人気のある商品を日本市場に適したやり方で持ち込むという実績を、Fitbitより前に在籍していたMicrosoftやAcerでも積む機会がありました。

ですから、現在僕が勤めている、ワイヤレスオーディオメーカーのSonosから日本法人代表の話をいただいたとき、僕のこの“強み”に期待されていると自己分析したのです。

マーケターでも、営業でも、開発でも、経営者でも、職業はなんでもよくて、僕が「やりたいこと」と「できること」、そして「他者から求められること」が交わる点が、この日本市場に適した売り方を考えることだったのです。

自分自身の才能のタネを発見し育て上げる

『「自分」を殺すな、武器にしろ』(朝日新聞出版)書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

転職という機会を通して、自分自身に正直に「なにがやりたいのか」「なにができるのか」を問いかけ、面接企業の反応を見続けたことで、職業の枠を超えて、自分自身の才能のタネを発見し、強みに育て上げることができた。

僕のエピソードから言えることは、転職は才能のタネを見つける1つの大きな機会だということです。

この記事を読んでいるあなたには、転職の予定がなくても、転職をすると仮定したら、自分のどんな能力が武器になるかを考えてみることをおすすめします。

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