「DV=身体的暴力」と思う人は絶対知るべき事実 言葉や経済的制裁、脅し、監視などの行為も該当

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精神的な暴力、性的な暴力などもDVに該当します(写真:Ushico/PIXTA)
「最も身近な家族ほど暴力的な存在はない」。そう語るのはカウンセラーとして40年以上のキャリアを持つ信田さよ子氏です。DVは殴る蹴るという身体的暴力、性行為を強要する性的暴力以外に、数々の言葉や経済的制裁、脅しや監視といった行為も該当します。ところが、日本ではDVに対する真の理解はなかなか進んでいません。その理由について、新著『家族と国家は共謀する サバイバルからレジスタンスへ』を上梓した信田氏が解説します。

フェニミズムの言葉を知ることによる衝撃

1人の若い女性が私の講演を聞いたあとに近づいてきて、こう言った。

「知らなきゃよかった」

この言葉は、1970年代にフェミニズムに関する本を読んだ女性たちからも多く発せられたはずだ。そこには私も含まれている。彼女たちは、なんだかヘンだ、それにしても苦しい、でも結婚生活なんてこんなものだ、と自分をなだめて日々を過ごしていた。

ところが、女性差別・性別役割分業といったフェミニズムの言葉を知ることで衝撃を受ける。日常生活の色彩が、淡いブルーから灰色に変わってしまうような変化に戸惑いながら、彼女たちは「知らなきゃよかった」とつぶやく。

知らなければ、あきらめてそれなりに穏やかな日常に流されていくこともできただろう。だが、いったん知ってしまった以上、知らなかった自分に戻ることはできない。違和感に根拠を与えられた喜びよりも、引き返すことのできない遠い道のりを思って途方にくれたのだった。

カウンセラーである私は、再び同じつぶやきを多くの女性たちから聞くことになった。彼女たち(時には彼ら)は性虐待の被害者であり、ドメスティック・バイオレンス(以下DVと略す)の被害者である。両者を同列に扱うことはできないが、外部の目から遮断された家族という私的領域において起きる暴力という点では、同じである。

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