JリートでTOB勃発、波乱含み「買収劇」の内幕 インベスコにスターウッドが1700億円買収提案

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1つは、買収後は私募REITとして運用するというスターウッドの出口戦略への疑義だ。インベスコは質問状の中で、「買収後にインベスコの保有物件を売却したり、インベスコ自体を解散する可能性があるか」を問うている。これに対し、スターウッドは「物件売却や解散の予定はない」と回答した。

だが、スターウッドの主張を額面通り受け取る向きは少ない。みずほ証券の大畠陽介シニアアナリストは、「私募REITとして運用を継続するメリットはない」と指摘する。スターウッドは2017年にアメリカの賃貸住宅を運用する上場REITを買収したことがある。これは円満に買収が進んだ案件であり、今回のような唐突な買収提案ではない。

スターウッドの目的は転売?

インベスコが抱える有利子負債約1241億円(4月15日時点)の存在もネックとなる。インベスコによれば、上場廃止によって期限の利益を喪失する可能性があり、その場合は物件を売却して返済原資を捻出する必要がある。

さらに、REITは配当可能利益の9割以上を分配するといった規定を満たすことで、法人税が課税されない特例(導管性要件)がある。この特例は同じ投資主の持ち分が5割を超えると適用されないため、TOBによってこうした税制メリットを失ってしまう。インベスコはこれらの点も尋ねたが、スターウッドは「投資家がTOBに応募するか否かの判断には関連性が低い質問だ」として、回答を拒んでいる。

ある外資系不動産ファンドの幹部は、「スターウッドは中長期的目線で運用するファンドではない。ポートフォリオをバラバラにして、物件ごとに転売するのではないか」と推測する。転売目的なら、期限の利益や導管性要件を喪失しても問題は少ない。オフィスビルの売買市場は活況で、鑑定評価以上での高値売却も不可能ではない。

もう1つの論点は、TOBに応募しなかった投資家から強制的に投資口を買い取るスクイーズアウトをめぐるものだ。TOBですべての投資口を取得できなかった場合、スターウッドは投資主総会での特別決議を経て、残る投資口を強制的に買い取ることできる。

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