JリートでTOB勃発、波乱含み「買収劇」の内幕 インベスコにスターウッドが1700億円買収提案
上場REITの法律上の扱いが株式会社ではなく、投資信託であることも事態を複雑にしている。株式会社におけるTOBの場合、提示された買い付け価格に不満を抱き、TOBに応募しなかった株主は、公正な価格をもって株式を買い取るよう裁判所に対して請求できる。
一方、REITについての規定を定めた投信法にはそうした異議申し立てに関する規定がない。仮にスターウッドがスクイーズアウト時の価格を買い付け価格より低く設定したとしても、投資家は買い付けに応じざるをえないのだ。
そこで、「後々安く買いたたかれるなら、不満があっても公開買い付け価格で応募してしまおう」と考える投資家が出現する可能性もある。インベスコは「投信法はスクイーズアウトを想定しておらず、スターウッドによる公開買い付けは認められない」として4月23日、TOBの差し止めを裁判所に申し立てるよう金融庁などに要求した。
外資系だから狙われた
2019年にはアメリカの独立系資産運用会社スターアジアグループが、オーストラリアのガリレオグループ系列のさくら総合リートに対してTOBを仕掛けた。こちらは投資口を買い付けるのではなく、スターアジアがさくらとの合併を提案。さくらの投資主総会で、さくらに代わってスターアジアが運用を担当する議案を提出され、賛成多数で承認された。
さくら側の運用会社・さくら不動産投資顧問の担当者は当時、「我々が外資系企業であるために、TOBの対象として狙われたのだろう」と語っている。TOBによって関係がこじれても、相手が日本国内に地盤を持たない外資系であれば、その後の事業展開に支障をきたさないという見立てだ。
今回のTOBも「外資対外資」という構図は同じだ。インベスコよりも割安なオフィスリートが存在する中、「スポンサーが外資だから狙われた」と推測する不動産関係者は少なくない。
投信法の間隙を突いた点もさくらのケースと似ている。スターアジアは議案を可決させる方策として、投資主総会に出席しない投資主の議決権を賛成票として扱う「みなし賛成制度」を利用した。対するさくら側は、同じ総会に相反する趣旨の議案が提出された場合はみなし賛成制度が適用されないことに着目し、修正動議を提出してスターアジア側の提案を封じた。
最終的にスターアジア側の提案が可決されたものの、騒動を受けて、みなし賛成制度を適用しないよう規約を改正するREITが相次ぐなど大きな波紋を呼んだ。投資信託でありながら買収と隣り合わせのREITをどう位置付けるかという課題は、スターウッドによるTOBでも改めて浮き彫りになった。
記事執筆時点でスターウッド、インベスコともに「現時点では取材に応じられない」と答えている。とはいえ、両陣営がPR会社を雇い、情報発信に向けた準備を進めている事実は、波乱含みの買収劇を予感させる。
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