「世界最低の出生率」台湾子育て世代の悲痛実態 住宅は高いし、公的保育サービスも足りない

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世界での最低の出生率となった台湾。子育て家庭への手当など支援は拡充される傾向にあるが、その効果は?(写真・今周刊)
台湾の出生率(合計特殊出生率、15~49歳までの年齢別出生率の合計)は世界最低――。CIA(アメリカ中央情報局)が発表した世界227カ国・地域の出生率予測で判明した台湾の現状だ。台湾の出生率は1.07となり、日本の1.38よりもかなり低い数字となっている。
台湾の人口は2020年に統計を取り始めて以降初めて自然減に転じた。これは死亡者数が出生者数を上回っており、少子高齢化問題が深刻化しているということだ。一方で、台湾政府は2021年2月、同年8月から子育て家庭に対する手当や学費の減免などの措置を拡大することを発表した。これには歓迎する声が多い。しかし、実際に出生率を回復させる効果が期待できるのか。
「今周刊」と財団法人・家庭計画協会は、「2021年台湾出生意欲大調査」を合同で実施した。この調査の結果から、出生率回復への道筋を示したい。

住宅価格の高騰が出産へのネックに

台湾の外資系企業で働く呉さん(32、男性)。彼の年収は100万台湾ドル(約384万円)と、同年代の平均年収である60万台湾ドル(約230万円)を大きく上回っている。それでも、現在交際している女性との結婚に踏み切れないとこぼす。「将来子どもが欲しいかと聞かれたら、もちろんイエス。でも、今の年収では私が受けてきたような家庭環境や教育を、生まれてくる子どもに与えられるか自信がない」と打ち明ける。

今回の調査では、15~49歳の生殖適齢期に当たる男女に対し「将来、子どもを持ちたいか(もう1人持ちたいか)」と質問したが、イエスと回答したのは全体の33%、女性では27.3%にとどまった。39歳以下の男女でみると、「子どもを持ちたい」と考えているのは39.6%と、全体の4割を切ってしまった。

「将来、子どもを持ちたいと思わない」との回答者は、その理由に「経済的な不安」(53%)を挙げる。また「結婚していない」「理想の出産年齢を過ぎてしまった」「子どもの教育に対する不安」「すでに子どもがおり、これ以上の子どもは望まない」「子育ては大変そう」「社会に対して希望を持てない」といった理由を挙げている。

台湾の若者たちは、経済的な不安を抱えながら生きているのが現状だ。その最たる理由が、住宅価格の高騰だ。今回の調査でも、全体の37.7%が「住宅購入のために結婚を遅らせることを検討している」とし、また36.9%が「住宅を購入するために子どもを持たない、もしくは子どもの数は少なくしたい」と回答している。

さらに、「将来、子どもを持ちたい(もう1人持ちたい)」という回答者の中でも、その51.3%が「住宅を購入するために結婚を遅らせることを検討」と回答、41.9%が「住宅を購入するために子どもを持たない、もしくは子どもの数は少なくしたい」と回答している。子どもを持ちたいという意欲のある層であっても、住宅問題を理由に晩婚や産み控えを検討しているということだ。

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