「世界最低の出生率」台湾子育て世代の悲痛実態 住宅は高いし、公的保育サービスも足りない
出生数が年々減少している台湾では、中央・地方政府が次のような対策を行っている。例えば、出生後に現金を支給する「生育(育児)奨励金」や、0~2歳児の託児施設利用に対する「託児補助金」、0~4歳児がいる家庭を対象に一定額を支給する「育児手当」と「育児休業」、労働保険の被保険者に給料分の6割を6カ月間支給する「育児休業手当」(育児手当と併用が可能)、幼稚園の学費の減免措置といったものが実行されている。とはいえ、これらの施策に実際に、子どもを育てられない、持ちたくないといった不安をどれだけ和らげる効果があるのだろうか。
今回、上記のような施策が実際に子どもを持ちたいという「出生意欲」にプラスに働いたかとの設問では、「幼稚園の学費の減免」が最も多く、59.8%が回答している。この措置が適用されれば、幼稚園の学費負担は各家庭で月々1500~3500台湾ドル(約5800~1万3500円)までに抑えられる。
託児所の増設や子育て手当の増額を望む声
次に「育児休業と育児手当の併用」がプラスになったとの回答者が58.2%となった。以下、育児休業手当(55.7%)、託児補助金(53.7%)となっている。逆に、「出生意欲にプラスにならなかった」のは生育奨励金の59.7%が最も高く、以下、育児手当(52.6%)、育児休業(51.9%)と続く。
一方で、台湾より出生率が高いフランスやドイツ、スウェーデン、日本は、出生率を回復させるために保育所などの公的保育サービスの充実に注力している。「今周刊」の調査では、台湾の若い世代でも「適正な価格で、かつ質の高い公的保育サービスの増加」を切実に願っていることが明らかになっている。台湾では現在、公立の託児所が大幅に不足しており、入所したいのに抽選に当たらないといった不満が親世代で高まっている。
具体的には、調査対象の52.4%が「公的保育サービスの増設」を政府に期待していると回答。29歳以下の層では、これを60%以上が望んでいる。とくに台北など北部地域の市民が、公的保育サービスの充実を求める傾向がほかよりも強いことがわかった。
この次に望まれているのは、子育て世帯への手当の定期的な支給や現行の手当や補助金の支給期間の延長だ。調査では50%近くの回答者が、育児手当の現行2500台湾ドル(約9580円)から5000台湾ドル(約1万9160円)へ増額してほしいと回答した。すでに台湾政府は、2022年8月から増額することを発表している。
ほかにも、18歳未満の子どもがいる家庭に対し、所得に応じた補助金の交付を40%が希望している。また、育児手当の支給対象を現在の0~4歳から満5歳までの拡大を35%が求めている。
さらに、37%の回答者がスウェーデンのように子育て世帯に対する柔軟な働き方を認めてほしいと回答した。これは、半年単位の育児休業制度を1日単位で取得できたり、育児の必要性に応じて労働時間を前日、半日、4分の1日、8分の1日と選ぶことができるようにしてほしいということだ。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら