東急、豪華列車戦略「北海道進出」勝負の2年目 2本目は?他地域での運行は?担当者に聞く

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ザ・ロイヤルエクスプレスを2本体制にして伊豆と北海道の両方で運行する可能性について、東急の髙橋和夫社長は「そういう考え方もありうる」と、昨年暮れに行われた編集部のインタビューで明らかにしている。「今は1編成なので、この事業を拡大するなら、複数本数持ったりしながらやらないと、事業の厚みがでてこない。その戦略は今構築中だ」。

昨年夏、北海道での運行に向けて伊豆から回送されるザ・ロイヤルエクスプレス=2020年7月21日(編集部撮影)

2編成体制というのは、北海道での事業を収益化できるということが前提になる。そのためには夏場だけでなく春や秋も旅行商品として成り立つか、地域の声を聞きながら検討していく必要がある。松田部長は、「いろいろ幅広に考えたい」と話す。

東急が北海道の観光列車戦略にさらに力を入れるとしたら、旅行商品の企画・販売と車内サービスだけでなく、第2種鉄道事業者として自ら運行を担う可能性はあるのだろうか。この点について、松田部長は明確に否定する。「機関車の乗務員を育成するのは難しい。われわれがサービスを行い、運行は運転知識と地域の事情に長けているJR北海道さんにやっていただくのが、相互のバランスとして最もいい」。

まずは北海道の足場固めか

運行は地域の事業者に任せて東急は車内サービスに徹するのであれば、理論上はザ・ロイヤルエクスプレスが活躍する舞台は北海道のみならず、全国に広がる。もし、「当社の路線で走ってほしい」と手を挙げる鉄道会社が出てくれば、実現する可能性はある。

だが、それよりもまず、北海道での存在感をしっかりと固めることが肝要だ。1年や2年でなく、毎年運行することが道内の沿線住民の信頼醸成にもつながる。さらに、JR北海道にも261系5000代「ラベンダー」編成や「ノロッコ号」などの観光列車がある。豪華さでザ・ロイヤルエクスプレスに劣るにせよ、その分はソフト面を充実させることでカバーできる。

全国には車両が豪華でなくてもソフトの力で乗客の満足度を高めている観光列車の例はたくさんある。伊豆でJR東日本のサフィール踊り子とザ・ロイヤルエクスプレスが組んだ旅行商品が売れているように、北海道でもJR北海道の観光列車と組んだ旅行商品が生まれれば、東急だけでなく、JR北海道にとってもメリットは大きいはずだ。

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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