コロナ「医療逼迫」に「国民が我慢せよ」は筋違い 森田洋之医師が語る「医療の不都合な真実」

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――そういう中では、新型コロナのリスクばかり見て社会活動全体を制限することのリスクを見ていないのは異常ですね。すでに「コロナ鬱」による自殺も増えています。「命か経済か」という短絡的なフレーズがありますが、経済苦による貧困も病気や死につながります。スポーツや芸術などの文化的なイベントを「不要不急」と決めつけるのも危険なことだと思います。

本当にバランスが悪いですよね。昨年、東京都知事の小池百合子氏が「今年は花見を我慢してください」と言いました。「さくらは来年も咲きます」といった高名な医学者もいました。しかし、「もう桜を見られるのは今年が最後」というお年寄りもいたんです。そして、コロナ禍2度目の春の今年も花見は我慢と言っています。人間らしい生活というものが私たちからどんどん奪われています。

人は独りで引きこもって生きていけません。人と人とのつながりで生きています。人間の社会が壊されて行っています。新型コロナだけをみている医療従事者の言うことを聞いて、社会のほかの大切なことを全部犠牲にしている。

先ほどもお話ししましたが、政治家が医者に頼って物事を決めているのが問題です。専門家は専門性という狭い領域の中で結果を出すことを求められています。人と人とのつながりを断ったことで中高生の自殺が過去最高になったとか、経済を止めたことで飲食業界・旅行業界が壊滅的な打撃を受けたり、出生数までもが激減してしまったとか、そういうことにはあまり目を向けられないのです。政治家が社会全体にとって何が大事かを判断しなければならない。この当たり前のことが日本で通用していない。

「医療全体主義」が日本を支配してしまっている

――ところが、与党以上にゼロコロナ志向のテレビや新聞、さらに野党が、新型コロナの被害や専門家の活動制限を主張する言葉ばかりを並べ立てる。国民を脅して、与党を国民に活動制限を強いる方向へ駆り立てているのが実態です。

コロナ禍の前から、医療偏重という問題がありました。過剰診療や生活の質を無視した苦しい延命治療など、医療に人間の生活や人生までもが支配されてしまうという問題です。今まではそれが病院の中にとどまっていました。

しかし、今回の新型コロナをきっかけに医療偏重が社会全体に広がった。医療界が「命を守る」「○○しないと死ぬ」と脅して、そうした恐怖で人々や世界を動かせることが証明されてしまった。まさに「医療全体主義」が日本を支配しているのです。

大崎 明子 東洋経済 編集委員

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おおさき あきこ / Akiko Osaki

早稲田大学政治経済学部卒。1985年東洋経済新報社入社。機械、精密機器業界などを担当後、関西支社でバブルのピークと崩壊に遇い不動産市場を取材。その後、『週刊東洋経済』編集部、『オール投資』編集部、証券・保険・銀行業界の担当を経て『金融ビジネス』編集長。一橋大学大学院国際企業戦略研究科(経営法務)修士。現在は、金融市場全般と地方銀行をウォッチする一方、マクロ経済を担当。

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