コロナ「医療逼迫」に「国民が我慢せよ」は筋違い 森田洋之医師が語る「医療の不都合な真実」

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今、大阪府で感染が増えて医療逼迫の状態にある、このままでは医療崩壊が起きると吉村洋文知事は訴えています。たしかに大阪だけを見ればそうなのかもしれませんが、一歩下がって全体を俯瞰すると別の景色が見えてきます。

厚生労働省が発表している全国の重症者数や病床数を見てみましょう。4月14日時点の発表で、大阪府の重症者は302人で重症者向けに確保した病床数は464ですから65%と確かにかなり埋まっています。兵庫県も116の病床数のうち77で66%まで来ています。ところが、となりの鳥取県では47病床のうち重症者ゼロ、島根県も25床あって重症者ゼロ、岡山は43病床のうち4人重症者がいますが、広島は48あってゼロ、山口県は重症者向けの確保病床数が124と兵庫よりも多いのですが、重症患者はゼロです。

厚生労働省が発表している確保病床の新型コロナによる占有率、4月14日0時時点

こういう状況ならヘリコプターで患者を隣県に運んでもいいし、逆に応援として、医師や機材が他県から来てもいい。ところが、そんな話にはまったくならない。日頃から病院同士は競争関係にあるので、協力関係になれないからです。都道府県の間はおろか、隣の病院とも協力関係にはなれません。まったく融通が利かない状態です。

病床も機材も新型コロナには数%しか使われていない

――そもそも新型コロナ患者を受け入れる病院が少ないですよね。今年に入って、国は新型コロナの重症患者1人受け入れに1500万円の支援金を出し、自治体からの支援金も上乗せされています。ですが、いっこうに受け入れは増えませんでした。

全国の日本の病床数は150万もあります。そのうち、新型コロナ患者を受け入れている病床数は6万で4%しかない。これでも実は増えてきたほうで、1年前の感染第1波で緊急事態宣言を行ったときには、0.7%しか使っていませんでした。

日本の病院の経営上の理由から常時満床を目指しています。そこには、本人の望む人生かどうかを別にして慢性疾患や終末期の高齢者を病院に収容しているという大問題があります。だから、病院の多くは新型コロナのために病床を空けたがらない。感染症は波があるので、患者数が急激に増えて、また、急激に減る。それに対応していたら、経営が成り立たないからです。

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