「やる気のない人」を劇的に変える質問のコツ 人は「自分で選んだこと」であれば頑張れる

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リスクの警告や公衆衛生のキャンペーンも、確かに情報を提供しているのだが、たいてい一方的に断言する形になっている。例えば、「ジャンクフードは肥満の原因になります」や、「飲酒運転は殺人行為です」といったものだ。

ここでの目的は人々を正しい方向に導くことなのに、これでは「押しつけがましい」「説教くさい」という印象を与えがちだ。たいていの人は心理的リアクタンス(何かを選択する自由が外部から脅かされたときに生じる、自由を取り戻そうとする反発作用)の状態になり、本能的に反論しようとする。

「ジャンクフードで太るなんてうそだ。マクドナルドばかり食べても太らない人がたくさんいるじゃないか」

「殺人なんて大げさだ。先週、友達が飲酒運転したけれど誰も死んでいない」

とくに対象に強い思い入れがあるような場合は、無理強いするとかえって逆効果になることが多い。

質問のもう1つの効果

しかし同じ内容を、例えば「ジャンクフードは体にいいと思いますか?」というように、質問の形にしたらどうだろう。ここで本心の答えが「思わない」であれば、相手は困った立場になる。質問に答えるには、自分の考えをはっきり言語化しなければならないからだ。ジャンクフードは体に悪いと認めざるをえなくなる。そして一度認めてしまうと、もう前ほど気軽にジャンクフードを食べることができなくなるのだ。

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質問には、相手が自分の答えに責任を持つようになるという効果がある。答えが何であれ、その答えのとおりに行動しようと努力するからだ。ナフィーズは学生たちに、「きみたちは何を達成したいのか」と尋ねた。彼がこの質問を選んだのは偶然ではない。学生たちの答えには、ナフィーズ自身の目標を達成する力があるとわかったうえで、あえてこの質問を選んでいる。

このように、メニューを提供する、命令ではなく質問をするというテクニックには、相手をコントロールするという印象を取り除く効果がある。上から押し付けるのではなく、相手に「自分ごと」として考えてもらうために「質問」を効果的に使ってみてほしい。

ジョーナ・バーガー ペンシルベニア大学ウォートン校マーケティング教授

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じょーな・ばーがー / Jonah Berger

国際的ベストセラー『インビジブル・インフルエンス 決断させる力』(東洋館出版社)の著者。行動変化、社会的影響、口コミ、製品やアイデア、態度が流行する理由を専門に研究する。一流学術誌に50本以上の論文を発表。新聞・雑誌に寄稿した記事も人気を博している。

Apple、Google、NIKE、ビル&メリンダ・ゲイツ財団などをクライアントに持つコンサルタントでもある。『ファスト・カンパニー』誌の「ビジネス界でもっともクリエーティブな人々」に選出され、その仕事は『ニューヨーク・タイムズ・マガジン』誌の「年間アイデア賞」で何度も取り上げられている。

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