「企業がケチになった」から日本経済は衰退した デフレや消費税は「副次的な要因」にすぎない

拡大
縮小

一方、企業部門では貯金が増えています。企業は生産性向上率ほど賃金を上げていないので、お金が貯まるのです。個人部門から吸い上げている金額を配当に回したり、投資に回したりすれば、企業部門の需要は増えて、内需全体は減りませんが、実際は配当もそれほど出さず、投資もしていませんので、貯金ばかりが増えています。

つまり、内需が不足している理由は、個人消費ではなく、企業の投資不足なのです。

企業が労働分配率を下げると、現在の個人消費に悪影響を及ぼします。

また、企業が先行投資をしない分だけ、労働生産性も上がらないので、将来の賃金も低迷します。将来の個人消費も増えません。

世界的に起きている企業の緊縮戦略

この現象こそ、日本の成長を低迷させている原因です。では、なぜ企業は労働分配率を下げているのでしょうか。その原因を「政府が放置しているデフレが原因だ」「消費税が原因だ」などと分析する人が多いですが、その仮説には大きな盲点があります。

実は、この現象は日本のみならず先進国各国で起きています。特に、2008年以降、労働分配率低下と企業の投資減少が深刻化しています。

まず、労働分配率の動向を確認しましょう。

1990年代に入ってから、世界的に労働分配率の低下傾向が続いています。ILOとOECDが2015年に発表した論文、The Labour Share in G20 Economiesによると、1980年代から労働分配率が大きく低下し、先進国各国では戦後の最低水準になっています。フランスでは1897年の水準まで下がっていて、アメリカでは1930年代より低い水準で推移しています。

次ページ労働分配率低下の原因は「モノプソニー」
関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT