「企業がケチになった」から日本経済は衰退した デフレや消費税は「副次的な要因」にすぎない

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これから生産年齢人口の所得が増えなければ、ますます所得は高齢者層に移転します。当然、生産年齢人口はますます貧しくなり、消費も細ります。その代わり高齢者が移転してきた所得を消費するので、中身は変わりますが、消費の総額は変わりません。

デフレの最大要因は「企業の緊縮政策」にある

日本では経済の供給側の問題を強調する人もいれば、需要側の問題を指摘する人もいます。しかし、残念ながら、総括的に見ている人はあまりいないように感じます。しかも、今日本が直面している問題は、勉強すればするほど複雑に感じてきたので、冒頭に書いたように私の意見を恩師にぶつけて議論をしたのです。

議論の結果、「日本経済の最大の問題は、企業の緊縮戦略にある」ということで意見が一致しました。

「企業の緊縮戦略」とは、簡単にいえば、日本企業が労働者の賃金を下げるだけで、投資も増やさず、配当も控え、浮いたお金を内部留保金としてためこんでいることを指します。つまり、日本で内需が足りていないのは、消費にまわるべき個人のお金を企業が吸い上げて、貯金していることが原因なのです。

デフレの正体も、経済成長率が低いのも、ここに主因があります。

経済学では、生産性の向上率と賃上げ比率の差の分だけ、デフレ圧力がかかるとされています。つまり、生産性向上率が5%で、賃上げの比率が3%だと、2%分のデフレ圧力が発生します。経済学の言葉で表現すると、「労働分配率が低下すると、インフレ圧力が弱まる」となります。

日本企業は規模に関係なく、労働分配率を下げています。

人口増加は地価を押し上げることでインフレに大きく寄与するのですが、日本は人口が増加しないので、労働分配率が低下すると、他国、とりわけアメリカよりデフレ要因を超えるインフレ要因が少なく、デフレに陥りやすい環境にあります。

どの経済でも、インフレ要因とデフレ要因があって、そのバランスで全体のインフレ率が決まります。例えば、日本もアメリカも、デフレ要因が−2%で、インフレ要因はアメリカが+3%、日本は+1%しかないならば、同じデフレ圧力でも、全体のインフレ率は大きく違ってきます。この場合は日本だけが慢性的なデフレとなります。

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