「企業がケチになった」から日本経済は衰退した デフレや消費税は「副次的な要因」にすぎない

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私はこの数カ月、日本のデフレ問題を検証するため、海外の経済学界のたくさんの論文を読みました。その中には「生産性向上はデフレ要因である」「PGS(生産的政府支出)が重要だ」など、示唆に富んだ論文が数多くありました。

特に衝撃的だったのは、世界のデータを分析すると、インフレになるほど購買力調整済みの生産性が下がるということでした。

シカゴ連銀によると、アメリカの1947年から1994年までのデータでは、インフレと生産性の相関係数は−0.36と、負の関係にありました。1956年からバブルが始まる前の1986年末までの日本のデータを分析すると、アメリカほど強くはありませんが、−0.12と、同じように負の相関関係にありました。

因果関係に関しては議論がありますが、120カ国の長期にわたるデータで、生産性向上率とインフレ率は一貫して負の相関関係にあることが確認されています。これは海外の経済学会のコンセンサスで、私が考えた仮説ではありません。

初歩的なものでも、経済学の教科書を読めば、生産性向上はデフレ要因だとあります。19世紀の後半と同じように、生産性が向上すればするほどデフレになりますが、労働分配率が下がらないかぎり、それは「いいデフレ」と言えます。逆に、インフレ率が高くなればなるほど、生産性向上率は下がります。

生産性向上の観点からすると、インフレでもデフレでもない環境は最も望ましいと思います。

デフレの最大要因は「個人消費」ではない

多くの人は、需給が崩れている理由を個人消費に求めます。主に、消費税の引き上げによる悪影響や、実質賃金の減少、可処分所得の減少などを問題視します。確かに、賃金は下がっています。

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