「学歴フィルター」を嫌悪する日本人の超危険 7社中6社が「学歴を参考にしている」と回答した

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この状況で企業が当然考えるのは、絶対数が減った(しかも学力が低下しているらしい)日本の学生にこだわらず、海外からも優秀な学生を採用しようということです。いま、大企業だけでなく中堅企業を含めて多くの企業で、採用のグローバル化が課題になっています。

「国籍に関係なく、とにかく優秀な人材を採用したい。そのために新卒一括採用など日本の特殊な慣行・ルールとどう向き合っていくべきか、重要な検討課題になっています。採用だけでなく、評価・報酬もグローバル化を意識して改革を進めています。学歴フィルターですか、日本人は学歴というとビビっと反応するので、扱いに困りますねぇ」(エンジニアリング)

企業は採用のグローバル化を進める中、学歴フィルターがクローズアップされる日本のガラパゴスな事情に苦慮している様子です。

学歴フィルターから「スキルフィルター」へ

おそらく、これから日本企業は、積極的に学歴フィルターの存在とその中身を公開するようになるでしょう。そうしないと、世界から優秀な人材を集めることができないからです。

たとえば、学生にとって、次のA社とB社でどちらが魅力的でしょうか。

A社「当社は公平な会社でありたいと思います。学歴不問ですし、スキルも問いません。どなたでもどしどし応募してください」

B社「当社は今後DXのコンサルティング事業を強力に推進します。IT系の大学・学部をGPA(成績評価値)3.5以上で卒業見込みの方、同等の資格を持っている方のみ応募してください。条件に該当しない方は応募を受け付けません」

日本の学生からエントリーシートがたくさん集まるのはA社、数は少ないものの世界中から優秀な学生が集まるのはB社でしょう。優秀な学生がA社を敬遠するのは、A社が何を目指しているのかわかりませんし、自分のスキルを高く評価してもらえるのか不明だからです。

ここで厄介なのが、日本では企業が「学歴を見る」と口にした途端、学生だけでなく一般国民・メディアから「差別をする会社だ」と袋叩きに遭うことです。そうならないためには、「学歴フィルター」という用語を止めて「スキルフィルター」とするなど、工夫が必要かもしれません(それでもバッシングは完全にはなくならないでしょうが)。

学歴フィルターというと、とかくふるいにかけられる学生の問題だと考えがちです。しかしそこには、企業がグローバルな人材獲得競争にどう立ち向かうかという大きな問題があるのです。

日沖 健 経営コンサルタント

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ひおき たけし / Takeshi Hioki

日沖コンサルティング事務所代表。1965年、愛知県生まれ。慶應義塾大学商学部卒業。日本石油(現・ENEOS)で社長室、財務部、シンガポール現地法人、IR室などに勤務し、2002年より現職。著書に『変革するマネジメント』(千倉書房)、『歴史でわかる!リーダーの器』(産業能率大学出版部)など多数。

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