サンデル教授が語る「大卒による無意識の差別」

「努力すれば成功できる」という発想の問題点

能力主義には2つの負の側面があります。1つは、大学に行かなかった人、成功しなかった人が「それは自分が努力しなかったせいだ」と自分を責め、苦悩することです。この結果は自分が招いたものだ、と。もう1つは、“勝者”にとっても大変な世界だということです。

そもそも能力主義の問題は、社会の中に「勝者」と「敗者」を作ってしまうことです。そして、この数十年の間に、勝者と敗者の分断はどんどん広がっており、これがアメリカやヨーロッパにおける政治の二極化を招いたと考えています。

勝者と敗者に分かれた世界では競争が激化し、成功することへの圧力は非常に大きいものとなる。顕著な例は大学入試です。アメリカでも日本でも、若者にとってどの大学に入るかはとてつもないプレッシャーになっており、これは必ずしも健全なプレッシャーではありません。成功しなければいけない、という強迫観念はトラウマにさえなります。

対話をしないと分断はもっと進む

――勝者と敗者の分断、あるいは社会や政治における二極化は手を付けられない状態にも見えますが、まずはリベラルから歩み寄るべきなのでしょうか。

分断の責任は双方にあり、どちらも対話を持ちかける努力をするべきですが、まずは運に恵まれ、大学にも行けて、成功している人が行動を起こすべきではないでしょうか。社会から疎外され、尊敬されていないと感じている人がなぜそう感じているのかを理解しようとすべきです。どんなに難しくても今、階級や人種、社会的バックグラウンドを越えた対話を始めなければ、もっと分断は進みます。

過去40年分断は広がり続けており、社会的結合はどんどん希薄になっている。社会的分断を解消し、私たちが負った傷を癒やすには、お互いを理解するための対話が必要です。これはアメリカだけではなく、すべての民主主義国家に言えることです。

――とはいえ、今の世の中において自分と「違う人」と交わったり、ましてや対話をすることは非常に難しくなっています。接点すらないという人もいます。

解消するには、社会レベルと個人レベル、2段階の対応があると思います。まず社会的・政治的レベルでは、コミュニティセンターなど、違うバックグラウンドや異なる人生を歩んできた人たちを集める場所が必要です。

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