サンデル教授が語る「大卒による無意識の差別」 「努力すれば成功できる」という発想の問題点

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公立学校はこういう場所になりえますし、地域におけるレジャーセンター、市民センターなどの文化施設、公園やスポーツ施設も利用できるでしょう。スポーツは昔から異なるバックグラウンドの人がともに集えるものの1つです。

分断を広げるという観点では、ソーシャルメディアに気をつける必要もあります。ある人が見ているフィードに流れてくるニュースや情報、意見は、その人自身の意見に近いものが多く、自分の意見や世界観と異なるニュースなどに接する機会はほぼありません。その点で、ソーシャルメディア、もっと言えば、既存メディアの在り方も見直したほうがいいと思います。

既存メディアは、自分たちがもともと持っている意見だけを出すのではなく、例えばテレビであればバックグラウンドが異なる人を集めて、互いが何について同意できないのか議論する場を作るべきです。

トランプ支持者とアンチが4時間語り合った

1つ面白い例をあげましょう。2017年、トランプが大統領に就任した直後、私はニューヨークでトランプ支持者とアンチを集めた番組をNHKでやりました。全米からそれぞれ9人ずつ集めて、トランプ、アメリカ、アメリカファースト主義、メキシコ国境の「壁」など当時物議を醸していたテーマについて、何についてお互い同意できないのかを議論しました。

4時間にわたった議論の末、双方が意見を変えることはありませんでしたが、互いを尊重できるようにはなりました。どんな懸念やモチベーションがそれぞれの考えや意見を構築しているのか、互いに理解することができたわけです。

議論の後、参加者の1人がこう言いました。「番組のおかげで、接点のない人たちが何を考えているのかよく理解できました。しかし、なぜ私たちを引き合わせてくれたのがアメリカではなく、日本のテレビだったのでしょうかね」。

このことは、アメリカの主要メディアでさえ、意見の違う人たちを集めて、可能であればお互いの理解を促すという活動ができていない、ということに気づかせてくれました。つまり、メディアには重要な役割があるということです。

個人レベルでは、自分と似たような人とばかり過ごすのではなく、自分の意見の殻を破って、自分とは違う人と意見を交換する時間を作ることが必要だと思います。スポーツでも文化的な集まりでもいいので、もっとカジュアルにバックグラウンドが違う人と出会う機会が必要です。

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