また、「自由で開かれたインド太平洋」という理念を共有する「クアッド」と呼ばれる日米豪印4カ国は、3月12日に首脳会合を開催。4カ国は、ワクチン専門家作業部会などを設置し、「インド太平洋の健康安全保障(Indo-Pacific Health Security)」を強化するべく、今年末までに具体的提言を行うと同時に、バイオテクノロジーの動向や機会をモニターするために連携するとしている。
このように日本は、地域秩序や、志を同じくする諸国との国際秩序形成を積極的に行っている。そして、こうした動きはさらに、深化する可能性を秘めている。
特に、クアッドを基盤とした「インド太平洋の健康安全保障」という概念と、それに基づく具体的政策の立案は、感染症危機に対する国際秩序構築に関する日本の戦略的方向性にとって、1つの大きな契機となりうる。
国家安全保障の観点が必要になる
感染症危機に対する国際秩序を創り上げるための外交活動は、これまでは各国保健当局を中心に展開されてきた。しかし、新型コロナ危機によって感染症危機が国家の生存と繁栄に影響を及ぼすことが自明となり、単なる保健分野の国際協力ではなく、国家安全保障の観点から同政策を進めることが急務になっている。こうした中、クアッドのような安全保障を軸とする外交フォーラムの潮流の中に位置付けて具体的な政策を作っていく、という発想の転換が必要だ。
つまり、国家安全保障というより広い政策体系の中に、感染症危機というピースをいかにはめ込むかという観点から秩序を捉えることが求められる。その場合、日本では、国家安全保障局を中心に厚労省と外務省が連携して、感染症危機に関する外交を行う体制を整備しなければならない。
日本が自国の国益と国際公益の両方にかなった国際秩序を自ら構想し、構築するためには、国際社会の特権的会合に参画できるような個人の育成が急務であると同時に、異なる三階層が折り重なる国際秩序を俯瞰的に捉え、各階層における感染症危機に関する個別政策の有機的結合を意識すべきだろう。そして、その個別政策の有機的結合が日本の国家安全保障に資するような絵姿(政策体系)を構想し、それを国家戦略として実行することが重要である。日本政府の構想力と実行力が問われている。
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