月収80万円が激減、シングル母が感じる無力感 コロナであぶり出されたシングル家庭の現状

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24時間対応のLINE相談も、コロナ前は1カ月に数件程度だったのが、1回目の緊急事態宣言が出された昨年4月は67件に急増し、その後も増え続けて6月には74件に上った。失職や時短営業による減収に加え、こんな相談も舞い込んだ。

「子どもが就職して家計が楽になると思ったが、コロナで採用が取り消された」

「大学生の息子がオンライン授業ばかりで大学生活に意義を見いだせなくなり、授業料を支払うのも嫌になって、大学をやめた」

「裁判期日が延期になり離婚調停が進まなかった。離婚が成立しないので児童手当がもらえず、貯金を取り崩した」

「子育てパレット」では、地域の拠り所となり、子連れで立ち寄れる“ママの居場所”づくりにも力を注ぐ(写真:週刊女性PRIME)

NPO法人「しんぐるまざあず・ふぉーらむ」などが昨年7月、約1800人を対象に行った調査では、コロナ禍で減収などの影響を受けたシングルマザーが7割超を占めた。自身の感染によって家族をケアできなくなる懸念から自発的に休職・退職したケースは3割にも上った。

こうした経済的な問題に加え、メディアで流される“よき母親像”やSNS上の投稿が「母親たちのメンタルを刺激している」と、前出の三浦さんは指摘する。

「子どもにプールを用意したり、インスタ映えするごはんの写真がアップされたりすると、自分の子育てと比較してダメだと思い込み、きちんと育てなきゃ、部屋を掃除しなきゃと頑張ってしまう。本当は苦しいのに世間体を気にして声を上げられず、我慢を重ねれば、本人がつぶれてしまいます」

ネット上で形成された「子育ての明るいイメージ」は、シングルマザーを苦しめ、劣等感から声を上げづらくなったり、必要以上に頑張ったりする。そうした現状を踏まえ、三浦さんが「大変だよね。何かあったら遠慮なく言ってください」とLINEでやさしく伝えると、せきを切ったように気持ちを吐き出すママたちもいるという。

「そんなに頑張らなくていい、ぐうたらな日々を送るママでいいんだよって。子どもにいちばん必要なのは、ママが笑顔でいることなんです」

日本社会特有の“生きづらさ”

コロナ禍で困窮するシングルマザーは何も非正規だけに限らない。

正社員のその女性は、1時間ほど電話で話をしたところで、急に込み上げてきたのか、涙声になった。

「これまでの人生、どんなにつらくてもなんとかなると思って生きてきた。今は本当にきつい。死にたいくらいになっちゃう。でも、子どもの顔を見たらやっぱりできない。夜にひとりで深酒をしてしまい、それぐらい気持ちが落ちるときはあります」

コロナ禍で生活が一変、「死にたくなっちゃう」と胸の内を明かす山口さん(写真:週刊女性PRIME)

そんな胸中を吐露した山口幸恵さん(41=仮名)は現在、東京・足立区にある家賃8万7000円のマンションで、保育園に通う5歳の息子と2人暮らし。夫とは4年前に離婚した。夫の浮気が原因で、問い詰めたら髪をつかむ、蹴るなどの暴行を受けたため、逃げるようにして現在のマンションへ移り住んだ。

山口さんの仕事は、大手生命保険会社の外交員だ。短大入学を機に東北から上京し、新卒で入社して以来、勤続20年を超える。法人向けの営業を担当し、年収は多いときで1600万円にも上った。

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